v2.8

平井信二先生の樹木、木材研究

サッサフラス属の樹木(その2)
5.シナサッサフラスの概要
 シナサッサフラス(シナサッサフラスノキ)Sassafras tsumu HEMSLEY(異名 Litsea tsumu HEMSLEY,Pseudosassafras tsumu LECOMTE,Pseudosassafras laxiflora NAKAI)は支那中部・南部産で、中国名を擦木、擦樹、南樹、黄楸樹、梓木などという。
 高さ35m、直径2.5mまでになる落葉高木で、樹皮は灰褐色となり不規則な縦の割れ目が入る。若枝は細軟毛があるかまたは無毛、頂芽は大きく楕円形、芽鱗は外面黄色で絹毛を密布する。葉は互生し枝頂に集在する。卵形または倒卵形で長さ9~18cm、幅 6~10cm、切れ込みがないか、または中部以上で2~3裂し、鋸歯はない。鋭尖頭で基部は楔形を呈する。硬い紙質で、基部から僅か離れた処から3行脉となり、中央脉からさらに羽状に側脉を出す。上面無毛、下面は灰緑色を呈し、無毛または脉沿いに短い 硬毛がある。葉柄は繊細で長さ1~7cmであるが、ふつう長い。紅色を帯び、無毛または短い硬毛をつける。
 総状花序を束生する形に近い円錐花序を頂生し、長さ4~5cmで、花梗をもつ花を多くつける。基部に長さ1~8㎜の数個の総苞片をつけ、これは遅くなって脱落する。花序の各部に淡黄褐色の軟毛を密布する。花被の筒部はきわめて短く、その先は皮針形 で長さ約3.5㎜の6個の裂片にわかれる。これらはほぼ同形で、外面に軟毛を疎生、内面はほぼ無毛である。雄花では完全雄ずい3個ずつが3輪になり、長さ約3㎜、花糸は扁平で軟毛を被むる。葯は卵状楕円形で4室があり、上方の2室はやや小さい。すべて内 向する。第一輪・第二輪の雄ずいには腺体がなく、第三輪の花糸の基部近くに短柄ある腺体をつける。これら3輪の内側、第四輪に三角状矢尻形で有柄の退化雄ずい3個がある。この特徴から、退化雄ずいが現れないサッサフラス Sassafras albidum NEES とわけて別属 Pseudosassafras とされた。なお退化雄ずい1個をもつ。雄花では、退化雄ずい12個が4輪になって存在し、雌ずいは1個、子房は卵状球形で長さ約1㎜、無毛、花柱は細く 長さ約1.2㎜、柱頭は盤状となる。状態よく育った樹では雄花に似た完全雄ずいと退化雄ずいをもつ両性花となるものがある。石果はほぼ球形で径は0.8cmまで、熟して藍黒色を呈し粉白を帯びる。果梗の上方は次第に膨大し、先端は浅い杯状になって果実 をつける。果梗は紅色を呈し無毛である。  
6.シナサッサフラスの材の組織、性質と材その他の利用
 おもに成俊卿ほか『中国木材誌』によって材の組織と性質について記載する。環孔材。辺・心材の区別は明瞭で、辺材は黄白色、薄褐色、心材は褐色、暗褐色を呈する。年輪は明瞭である。木理は通直、肌目は中位から粗である。
 孔圏の道管は2~4、ときに5層あり、単独および各方向に2個、ときに3個が接続する。単独道管の断面形は楕円形、卵形などで、道管の接線方向の径は多くは0.24~0.29㎜、最大0.32㎜または以上である。孔圏外の道管は単独および放射方向に2~3個が 接続し、分布数は約12/m㎡である。単独道管の断面形は円形、広楕円形などで、ときにやや多角形の輪郭となる。道管の径は0.06~0.095㎜である。せん孔板は傾斜し、単せん孔をもつが、バーが1~4条の階段せん孔が見られるものがある。接続道管相互間 の有縁壁孔は交互配列をし、その径は0.006~0.009㎜である。心材にチロースがきわめて多い。
 材の基礎組織は繊維状仮道管または真正木繊維で、有縁壁孔の数は少ない。繊維の長さは1.12(0.88~1.38)㎜、径は多くは0.015~0.025㎜である。まれに隔離木繊維が見られる。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織がよく発達し、孔圏では、道管の間を埋めて繊維に代わって基礎組織となる状態を呈し、孔圏外では翼状から連合翼状柔組織になり、年輪端部では不規則な帯状の様態を示す。ターミナル柔組織は明らかでない。また単独 で散在する柔細胞があり、これらは油細胞になっているものが多い。柔細胞の中に樹脂様物質の含有が少なく、結晶は見られない。
 放射組織は1~2、ときに3細胞幅で、単列のものは少ない。1~39細胞高または以上であるが、10~20細胞高が多い。その構成は異性で、単列部分は直立細胞または方形細胞、多列部分はおおむね高さの小さい平伏細胞の層であるが、ときに両者の間の移 行型の高さが大きく放射方向の長さが短い平伏細胞の層となっている。上下端末の層には油細胞になっているものがかなり多い。通常の細胞の中に樹脂様物質の含有が少なく、結晶は見られない。
 材の気乾比重に0.53、0.58の記載があり、0.58のもので平均収縮率は接線方向0.28%、 放射方向0.18%、体積0.47%、縦圧縮強さ413kg/c㎡、曲げ強さ931kg/c㎡、曲げヤング係数11.5×10(4)kg/c㎡、衝撃曲げ吸収エネルギー0.63kg・m/c㎡、ブルネル硬さは横断面4.2kg/m㎡、放射断面4.0kg/m㎡、接線断面3.6kg/m㎡を示す。
 製材は容易、乾燥は容易で割れの出ることが少ない。切削加工も容易で、刃の摩耗が少なく、よい仕上げ面が得られる。接着、塗装にあまり問題はない。釘の保持力は中程度で、打ち込みで割れることは少ない。心材の耐朽性は高いが、防腐剤の注入は 困難である。
 柱・桁・屋根組みなどの建築構造剤、フローリング・窓・門などの建築造作材、家具、器具、船舶、車輌、木槽、枕木、橋梁、ドック用材などの用途があり、とくに造船用の良材の一つとして評価されている。また合板にも作られる。
 根部、葉、果実から芳香油が得られ、風邪、血液循環などの薬用にされる。種子からの搾油はワニスなどに用いられる。また樹皮のタンニンの利用もある。  
7.ランダイコウバシの概要
ランダイコウバシ(ランダイヤマコウバシ、クサノオオコウバシ、タイワンサッサフラス、ランダイサッサフラスSassafras randaiense REHDER(異名 Lindera randaiensis HAYATA,Pseudosassafras laxiflora NAKAI var. randaiensis NAKAI,Yushunia randaiensis KAMIKOTI)は台湾の中央山脉に生じ、中国名を台湾擦木、台湾擦樹という。
 直径70cmまでになる中高木で、樹幹は通直、樹皮は黒褐色を呈し、縦の割れ目ができる。小枝は無毛で、乾いて紅褐色を呈する。葉は互生し、菱状卵形で長さ10~16cm、幅3~7.5cm、鋭尖頭、基部は広い楔形をなす。鋸歯はなく、多くは切れ込みが ないが、ときに2~3浅裂するものが出る。厚い紙質で、側脉は7~9対あり、分裂する葉では基部近くからでる3行脉に近い形になる。下面は蒼緑色を呈し、葉柄の長さは約4cmである。
 総状花序を束生する形に近い円錐花序を頂生または頂生に近く出し、その長さは約3cm、基部に3~4個の総苞片があり長さ約15㎜で遅く脱落する。花梗の長さは約6㎜である。花被の筒部はきわめて短く、裂片は6個で長さ約4㎜、外面に微軟毛を疎生し内 面は無毛である。雄花では完全雄ずい3個ずつが3輪につき、花糸は扁平で軟毛がある。第一輪、第二輪の雄ずいには腺体ではなく、第三輪の雄ずいには1対の無柄の腺体がつく。葯室は第一輪で2室ときに3室、第二輪・第三輪で2室である。この葯室が2個 であることを特徴として別属としての Yushunia がたてられた。最内の第四輪に退化雄ずい3個があり、三角状心形、またはやや完全雄ずいに近い形を示し有柄である。退化子房1個もある。雄花は雄ずい1個と退化雄ずいをもつが、また完全雄ずいを具えて両性花になっているものがある。石果は液果様 で、球形、径0.6~0.7cmである。果梗は長さ2.5~5cmで上端が膨大して浅い杯状となる。  
8.ランダイコウバシの材の組織、性質と利用
 環孔材。辺・心材の区別は不明瞭で、材は淡黄紅色から紅褐色を呈する。年輪は明瞭に認められる。材のアルコール浸出液はフラボン反応を呈する。
 孔圏の道管は1~2層で、単独および2個ほどが接続する。単独道管の断面形は円形または卵形で、道管の径は0.14~0.24㎜である。孔圏外では道管はほぼ均等に散在し、多くは単独、ときに2~3個がおもに放射方向に接続する。全体を通じてせん孔板は 水平または傾斜し、単せん孔をもつ。接続道管の間の有縁壁孔は交互配列をし、径は0.012~0.014㎜に達する。チロースをもつ。材の基礎組織をなす真正木繊維または繊維状仮道管の長さは0.4~1.0㎜、径は0.02~0.03㎜、壁厚は0.002~0.003㎜である。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織がよく発達し、孔圏では道管の間を埋めて基礎組織様となる。放射組織は1~2、ときに3細胞幅、多くは5~15細胞高で、その構成は異性である。
 材の気乾比重に0.42、0.5の記載があり、0.42のもので縦圧縮強さ490kg/c㎡ 、横圧縮強さ73kg/c㎡、縦引張強さ627kg/c㎡、横引張強さ18kg/c㎡、曲げ強さ963kg/c㎡、曲げヤング係数12.0×10(4)kg/c㎡、せん断強さ200kg/c㎡、割裂抵抗47kg/cm、ブルネル硬さ3.1kg/m㎡が報告されている。
 材の用途は建築造作材・装飾材、家具、器具、船舶その他で、また化粧ベニヤおよび合板にも用いられる。  
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