v2.8

平井信二先生の樹木、木材研究

タカサゴノキ属の樹木(その1)
1.タカサゴノキ属の概要
 タカサゴノキ属(マラス属)Homalium イイギリFlacourtiaceae に属するが、ときに別科 Samydaceae とされることもある。世界の熱帯、亜熱帯地域に180種または200種以上が分布するとされる大きな属である。英名でhomalium,Burma lancewood,cogwood,aranga,malas とされ、ビルマで myaukchaw,myaukugo,タイで khan nang,中国で天料木、ラオスで khen nang,マレーで selimbar,petaling padang,サバでtakaliu,keruing rengkas,bansisian,インドネシアで gia,hia,delingsem,melas momara,manuk,フィリピンで aranga,arangan,puyot,パプア・ニューギニア地域で malas, メキシコで palo de padra, マルチニーク、仏領ギニアで bois d'acouma, ガイアナで conageddiballi, コロンビアで trebo, ベネズエラで caramacate,marfilなどという。
 常緑または落葉の低木または高木で、普通高さ30m、直径75cmまでであるが、ときに高さ62m、直径1.4mまでに至る大高木となる。樹幹は一般に円柱状、通直で、高さの半分ほどまでの枝下高があり、しばしば嶮しい板 根をもつ。樹皮は灰褐色などでほぼ平滑のものが多いが、また多少凹凸があり、鱗片化するものがある。葉は互生する単葉で、長楕円形、卵形など呈し、やや疎らな鈍鋸歯や波状歯をもつものが多くまた全縁のものもある。羽状脉をもち、ふつう葉柄は短 く、托葉を欠くか、または存在しても微小で早落性である。
 花序は腋生またはやや頂生し、穂状に近い総状花序まはたそれらが複成した円錐花序をなし多くの花をつける。これらは総状花序軸に沿ってときにやや間隔をおいて数個ずつが束出するものが多い。ほぼ無柄または関節のある小花柄があり、小さい脱落 性または残存性の苞葉を1個つける。花は放射相称の両性花で、5~8数性のものが多く、また4および9~12数性までのものがある。がく筒部は倒円錐形などで、子房の下部と合着し、線形ないしへら形のがく裂片がつく。花弁はがく裂片と同数でこれに互 生し、それぞれ離生する。雄ずいは花弁に対生して1個または2~8個、ときに12個までが束生して花盤腺体の裂片の間または花弁基部につき、きわめて稀にさらに1個が花盤腺体の中に不規則につく。花糸は糸状で、葯は小く側着し外向する。花盤は裂片化 し、通常各がく裂片に対生した細軟毛ある腺体となる。子房は半下位ないしほとんど下位で、上半部はがく筒部から離生する。1室で、側膜胎座は2~6個、ときに28個まであり、各胎座の先端近くに3~7個、ときに1~2個の胚珠をつける。花柱は2~5、 ときに7個まであり、離生または基部で合着し、柱頭は小さい。
 果実は多少革質のさく(蒴)果で、しばしば宿存のがく片と花弁をつけ、これらは花後に増大しているものが多く顕著である。不裂開または先端付近で2~8弁に裂開する。種子は1個ま たは少数で微小である。仮種皮はなく、内胚乳は豊富で、子葉は葉状である。  
2.タカサゴノキ属の材の組織
 散孔材。辺材・心材の境界は一般に不明瞭で、辺材は黄白色、淡黄褐色、淡紅褐色など、心材は褐色、紅褐色、ときに黄褐色などを示す。生長輪は通常不明瞭である。木理はふつう通直、ときに交走し、肌目は多くは精で均質である。ときに不顕著な生 長輪で、接線断面にもく(杢)が出ることがある。リップルマークは見られない。
 道管は単独および2~4、ときに8個までが放射方向に接続し、まれにやや団塊状となることがある。分布数は16~50/m㎡の広い範囲にわたるが、18~30/m㎡程度が多い。単独道管の断面形は広楕円形などで、道管の径は0.03~0.18㎜である。せん孔板は普 通傾斜し、単せん孔をもつ。接続道管の間の有縁壁孔は交互配列をし、径は0.003~0.005㎜で小さいが、0.008㎜までの記載がある。しばしば孔口が結合している。道管と放射組織との間の半縁壁孔対もほとんど同様である。チロースが認められるものはほ とんどない。
 材の基礎組織を形成するものは、微小な壁孔縁の有縁壁孔をもつ繊維状仮道管で、隔離繊維であることが多い。長さ0.9~2.8㎜、径は0.01~0.03㎜、壁厚は0.003~0.007㎜である。
 軸方向柔組織は多くは単独で道管周縁や基礎組織中に 散在する柔組織で、その量はきわめて少ない。柔細胞の径は0.01~0.03㎜、壁厚は0.001~0.002㎜ほどである。
 放射組織は1~4、まれに5細胞幅で、高さは80細胞高または以上まで種々の程度のものがある。その構成は異性で、軸方向の両端および多細胞 幅部分の中間に10細胞層まで、ときにそれ以上の単列部が混在し、これらは直立細胞または方形細胞、その他の多列部分は高さの低い平状細胞の層からなっている。大型細胞とくに辺縁のものに菱形の結晶が多く含まれ、しばしば直立細胞が水平隔離をも つ形で2個または以上の結晶を含むことがある。細胞内は内容物が多い。通常シリカは見られない。  
3.タカサゴノキ属の材の性質と利用
 材の気乾比重に0.60~1.12の広い範囲の記載があるが、0.80~0.95程度が多く、おおよそ重硬である。収縮率は大きく、1例で生材から含水率12%までの値に接線方向5.0%、放射方向2.5%があげられている。強度は大きい。材質数値と材の化学的組成が求 められているものはそれぞれ各樹種の項にあげた。
 製材は、材中にシリカを含まないが一般に材が重硬なためいくらか困難で動力を多く要する。ただし鋸歯の鈍化は著しくない。天然乾燥はやや困難、とくに仮目材が木口割れや表面割れ、反りや多少の狂いを生ずる傾向がある。人工乾燥では暖和なスケ ジュールが必要とされる。鉋削その他の機械加工はほぼふつうに行われ、とくに施削、研削では良好な仕上げ面が得られる。釘打ちには前穿孔が必要で、釘の保持力は大きい。曲げ加工は支障が少ない。単板切削、合板製造には大きな支障はない。心材ま たは濃色の材は接地、外気条件でも耐朽性がある。白蟻の対してかなり抵抗性があり、ヒラタキクイムシ、ピンホールの食害はなく、海虫にも抵抗性の比較的大きいものがある。防腐薬剤による処理は心材、濃色材ではかなり困難であるが、辺材、淡色材 では容易である。
 一般に材が著しく重硬ではなく、強度が大きく、耐朽性・耐虫性が高いので、これらのことが要求される用途にはおおよそ適当である。市場材としてまとまって出材されるのはパプア・ニューギニア地域のほかには少ない。この地域か らわが国にかなりの量が輸出されている。一般的な用途をあげると、重構造物、建築構造材、フローリング・窓枠などを含む建築造作材、内装材、道具の柄・櫛などを含む器具材、農機具、枕木・電柱・橋梁の構造材および敷板・棚柱などの土木材、とく に埠頭の敷板・ダンネージ・海水中のパイリングなど、ボードの竜骨・オールなどを含む船舶材、トラックボディなどの車両材、家具・キャビネット、箱・パレットなどの包装材、施削物・彫刻その他がある。木炭を含む燃材としても良好である。  
4.Homalium travancoricum BEDDOME
 Homalium travancoricum BEDDOME はインド南部産の高木である。葉は長さ7~15cmで無毛である。総状花序は葉より短い。花は径6㎜ほどで、ほとんど無柄、密毛がある。花弁はがく裂片の長さの3倍ほどあり、雄ずいは各花弁の前に3~4個ずつが束生してつく。  
5.Homalium zeylanicum BENTHAN
 Homalium zeylanicum BENTHAN はインド南部、スリランカに生ずる高木で、インドで kalamattiga,kal avarum,kaladamba, スリランカで liyan,liyangu などという。
 樹幹は通直、樹皮は淡灰色を呈し、粗?である。葉は楕円形などで長さ10~12.5cm、鋭尖頭、基部は楔形を示す。鈍鋸歯があり、側脉は6~8対、無毛で下面は紫紅色に染まる。葉柄の長さは13㎜ほどである。若葉は深紅色を呈する。
 花は 径が13㎜ほどで、有毛、小花柄に関節がある。花弁はがく裂片より長く、雄ずいは各花弁の前に1個ずつがつく。
 材は灰紅色から紅褐色を呈し、中心部は不規則により暗色となる。肌目は均質で硬い。材の気乾比重に0.61~0.90の記載があり、耐朽性、 耐虫性があるとされている。  
6.Homalium nepalense BENTHAM
 Homalium nepalense BENTHAM(異名 Blackwellia nepalensis WALLICH)はネパール産の高木である。樹皮は黄白色を呈し、鱗片状で剥落する。葉は卵形で長さ10~12.5cm、基部は楔形を示す。葉柄の長さは8~13㎜である。
 腋生の円錐花序を出し、花はほとんど無柄でつき、径は6㎜ほど、灰色の細綿毛を布き、不快 な匂いをもつ。がく裂片と花弁はほとんど同形で、雄ずいは各花弁の前に1個ずつがつく。
 材は白色で、肌目は精、光沢がありやや硬い。生長輪は明らかである。気乾比重に0.85の記載がある。  
7.Homalium schlichii KURZ
 Homalium schlichii KURZ はバングラディシュ産の常緑高木である。葉は楕円状皮針形で長さ12.5cm、無毛、葉柄の長さは8㎜ほどである。総状花序が複成した円錐花序を頂生し、花序軸に白色の微細毛をもつ。花は小花柄をもち、径は6㎜で、やや灰色の細綿毛を被むる。雄ずいは 各花弁の前に3個ずつがつく。  
8.Homalium minutiflorum KURZ
 Homalium minutiflorum KURZ はビルマ産の高木である。花は小花柄があり、微小で径は2㎜ほど、4数性である。がく筒部は倒円錐形で無毛、がく裂片と花弁に軟毛がある。雄ずいは各花弁の前に1個ずつがつく。  
9.タカサゴノキ
 タカサゴノキ Homalium cochinchinese DRUCE(異名 Homalium fagifolium BENTHAM)は支那南部(湖南・江西省南部以南)、海南島、台湾、ベトナムに生じ、中国を天料木という。
 高さ2~12m、直径50cmまでの落葉または常緑高木で、樹皮は灰褐色から黒褐色を呈し割れ目は出ない。若枝に黄色の短絨毛を被むる。葉は卵形、楕円形などで長さ6~13cm、幅3.5~6cm、短鋭尖頭、基部は広い楔形を示す。鋸歯があり、側脉は7~9対 、両面中肋に沿って有毛である。葉柄は長さ2~3㎜で有毛である。
 穂状様の総状花序を腋生し、長さ6~15cm、花序軸と小花柄に細軟毛を布く。花は6~8数性で、径5~6㎜、白色を呈する。がく筒部は倒円錐形、がく裂片は倒皮針形で長さ約4㎜、縁毛がある。花弁はがく裂片とほぼ同形であるがやや大きく、果時には増 大して長さ8~9㎜となる。雄ずいは花弁の前に1個ずつがつく。これらと互生して花盤腺体がある。子房は下部ががく筒と合着しているが、上部は離生して広い円錐形を呈し、花柱はふつう4個ほどで有毛である。さく(蒴)果は倒卵形である。
 変種カワリタカサゴノキ(中国名:台湾天料木Homalium cochinchinense DRUCE var. pseudopaniculatum LI異名 Homalium fagifolium BENTHAM var.pseudopaniculatum YAMAMOTO)は台湾製で、花序が円錐花序様に複成しているものである。
 タカサゴノキは散孔材で、辺・心材の区別は不明瞭、黄白色から灰褐色を呈し、肌目は精である。道管は単独および2~5個が放射方向に接続し、分布数は26~36/m㎡である。単独道 管の断面形は卵形、楕円形または円形で、道管の径は0.06~0.13㎜を示す。せん孔板は傾斜し、単せん孔をもつ。接続道管の間の有縁壁孔は交互配列をし、その径は約0.008㎜である。材の基礎組織をなす繊維(繊維状仮道管と思われる)はしばしば隔離 があり、長さ1.0~2.0㎜、径は0.018~0.025㎜、壁厚は0.003~0.004㎜を示す。
 軸方向柔組織には、多くは1細胞層の周囲柔組織と散在柔細胞がある。放射組織は1~2ときに3細胞幅で、15細胞高または以上と思われる。その構成は異性で、軸方向辺縁の 単列部は大きい直立細胞層であり、多列部は通常小さい平状細胞層からなる。細胞中にはしゅう酸石灰の結晶がしばしば見られる。材は家具、彫刻、木工品その他の用途がある。  
10・Homalium breviracemosum HOW et KO
  Homalium breviracemosum HOW et KO は支那・広東省産で、中国名を短穂天料木という。
 常緑低木で、樹皮は灰黒色を呈し縦の割れ目が出る。葉は長楕円形または倒卵状長楕円形で長さ5~11cm、短鋭尖頭、基部は円形を示す。縁に鈍鋸歯があり、側脉は4~5対、両面無毛である。葉柄の長 さは5㎜までである。
 総状花序を腋生し、長さ5~6cm、花序軸は有毛である。花は6~7数性、径は7~8㎜、有毛、小花柄の長さは2㎜である。花弁はがく裂片よりやや大きく、外面は白色を呈し、果時には長さ3㎜以上となる。さく(蒴)果は倒卵 形を呈する。  
11.Homalium brevisepalum HOW et KO
 Homalium brevisepalum HOW et KO は支那・広西省に生じ、中国名は短萼天料木という。
 常緑低木で、若枝は有毛である。葉は長楕円形などで長さ6~10cm、幅3.5~5cm、短鋭尖頭、基部は円形に近い。縁に細かい鈍鋸歯があり、側脉は5~7対、網脉は明瞭である。葉柄は短く疎毛を生 ずる。
 穂状に近い総状花序を腋生する。花は5ときに6数性で、径は8~11㎜、小花柄は有毛である。花弁は広いへら形でがく裂片より著しく大きく長さ5㎜ある。花盤は5個の腺体からなる。さく(蒴)果は無毛である。材は家具、農具などに用いられる。花に 芳香があり、蜜源となる。  
12.Homalium kainantense MASAMUNE
 Homalium kainantense MASAMUNE は支那・海南島産で、中国名を濶弁天料木という。高さ12mまでの落葉高木で、樹皮は灰褐色を呈し、ほぼ平滑である。小枝は無毛である。葉は楕円形、倒卵状長楕円形で長さ7.5~13cm、幅4~6cm、短い鋭尖頭、基部は耳形に近い。紙質で、鈍鋸歯があり 、側脉は6~7対、無毛である。葉柄の長さは約15㎜である。総状花序は長さ5~11cmで、花序軸は有毛、小花柄の長さは約3㎜で有毛である。花は7ときに6数性で白色を呈する。がく裂片は帯状皮針形で、果時の長さは4㎜となり、花弁はこれより著 しく大きく長さ7~8㎜である。  
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