v2.3

平井信二先生の樹木、木材研究

コバノブラッシノキ属の樹木
9.広義のカユプテ類の材の性質と材その他の利用
 材の気乾比重は0.60~0.90の範囲の記載があり。0.70~0.85のものが多いが、小さいものは0.60以下、大きいものは1.06の例がある。収縮率の値は比較的大きく、気乾比重0.75のもので、生材から気乾までの収縮率は接線方向7%、放射方向3.5% 、強度的数値では、縦圧縮強さ538kg/c㎡、曲げ強さ985kg/c㎡、曲げヤング係数13.2×10(4)kg/c㎡、ヤンカ硬さ745kgが報告されている。
 材中にシリカが0.2~0.95%含まれるとの報告があり、鋸歯を鈍化させるため製材はやや困難であり、鉋削でも鉋刃の鈍化のためやや困難であるが、仕上げ面は平滑である。乾燥は割れや狂いが出やすく困難である。接着性は良い。心材の耐朽性は高く、 接地、淡水および海水中でも耐久力があり、白蟻にも抵抗性がある。辺材はキクイムシの食害はないが、丸太のままでおかれた場合は青変菌におかされる。
 高木性でかなり形質が良いものもあるので、材は柱・梁・土台などの建築構造材、フローリング ・枠材などの建築造作材、足場材、家具、工具の柄などの器具材、包装材、船舶、車両、柵柱・橋梁・埠頭・枕木などの土木用材、鉱山用材その他と燃材に用いられる。
 パルプへの利用開発も進められている。
 樹皮の薄い外層はボートのコーキング、枕などのクッション材、マットレス、食品・果実の包装材、コルク質部分は漁網の浮子、樹皮は一般は屋根茸材、たいまつその他の用途がある。
 葉から得られる精油については次項に別記する。民間薬では、果実はインドネシアでジャムー(jamu)生薬の一つで、おもに強壮剤に用いられる。
 樹皮・葉などを神経鎮痛薬に外用し、樹皮をかんで軟らかくしたものを膿の吸出しに用いる。花密は養蜂に利用される。樹は行道樹、庭園樹に植栽され、また湿地・半乾地の緑化植栽、錫鉱山跡地の植栽、防風植栽などに用いられる。  
10.カプユテ油
 カプユテの葉を蒸留してカプユテ油(cajeput oil)が得られる。蒸留に銅製装置を用いられるため緑色を呈するものが多いが本来は無色で、比重0.92~0.93を呈し、障脳に似た匂いをもつ。採油率は0.3~0.6%である。その主成分はシネオール(cineol)で45~65%を占め、そのほかにα-テルピネオー ル、1-d- ピネンなどが含まれる。
 薬用では発汗解熱、消化、回虫駆除などに内用され、しばしばオリーブ油と混和してリューマチ、神経痛、頭痛、歯痛の鎮痛、けいれん、打撲と切り傷、皮膚病に外用される。また防腐剤、害虫忌避剤、線香、石けんなどの化粧品その他の賦香料に用い られる。南方地域の各地で生産されることがあるが、オーストラリア、モルッカ諸島、ジャワ、べトナムに比較的生産が多い。しかし合成品の発達で生産量はきわめて少なかった。  
11.狭義の Melaleuca lecadendron LINNAEUS
 狭義の Melaleuca lecadendron LINNAEUS (異名(?)Melaleuca latifolia REAUSCHEL,Myrtus leucadendron LINNAEUS)の分布についてはオーストラリアのクイーンズランド・北部地方・西オーストラリアの沿海地域、ニューギニア南部、ニューカレドニア、モルッカ諸島と記した。
 高さ22~32cm、直径60cmほどまでになる常緑の中~やや大高木である。成葉は皮針形などで通常長さ10~20cm、幅1~2cm、薄い革質である。やや明るい緑色で、縦脉は5本あり、他の脉理はときに不顕著である。無毛である。
 花序はふつう穂状花序で、1~3個が頂生または上部葉腋に単出する。多くは長さ6~15cm、幅2.2~3cm、花は白色から黄白色で、花序中で単出または3個ずつ群着し、ときにこれらは密接してつく。さく(蒴)果はやや円筒形で長さ3~4㎜、幅3.5~4.5㎜ 、薄壁で開口は広い。  
12. Melaleuca cajuputi POWELL
 Melaleuca cajuputi POWELL(異名 Melaleuca leucadendron LINNAEUS vra.minor DUTHIE,Melaleuca minor J.E.SMITH,Melaleuca saligna,Myrtus saligna BURMAN FIL.)はオーストラリアのクイーンズランド・北部地方・西オーストラリア、ニューギニア南部、タニンバル諸島、モルッカ諸島、チモール、ジャワ、ボルネオ、スマトラ、マレー半島、インドシナ、タイ、ビルマに自生し、また植栽もされる。
 常緑の低木から中高木で、大きいものは高さ25mまで、最大40m、直径1.2mまでとなる。樹冠はかなり幅広く密で、やや銀色を帯びる。樹皮は厚く、3cmまたは以上となる。小枝は細いが下垂しない。
 若枝に長さ2㎜ほどの伸びた毛をもつ。葉は長楕円形などで長さ5~12cm、幅1~6cmで多くは2.5cm以下、鋭頭ないし鈍頭、基部は楔形から円形を示す。薄い革質で、鈍い緑色を呈する。縦脉は5本ほどで明瞭、他の脉理も明瞭、細軟毛をもつものから、やや 無毛のものまであり、古葉に腺点が多い。葉柄の長さは0.3~1.1cmである。
 花序の長さは3.5~9cm、幅1.5~2cm、花序柄に絹毛を布き、花序軸の太さは1~1.3㎜で後に太くなる。がく裂片は4~5個あり、三角形、卵円形などで長さ0.7~0.9㎜、花弁は5個で、倒卵形など、長さ2~2.7㎜、雄ずいは7~10個ずつが5個の束 になって花弁に対生する。長さ7~10㎜で、白色である。基部の合着して細くなった爪の長さは1~3.5㎜を示す。葯の長さは0.4~0.55㎜である。雄ずいの長さは10㎜ほど、花柱の長さは3~3.5㎜で、柱頭は小さい。さく(蒴)果はカップ形、球形など で長さ3~3.5㎜、幅3.5~4㎜である。
 Melaleuca saligna とされたもののカプユテ油に植物の生長抑制作用があることが知られている。
 この種に次の3亜種の区分が提案されている。
(1)Melaleuca cajuputi POWELL subsp.cajuputi:オーストラリア、タニンバル諸島、モルッカ諸島、チモールに生ずる。葉の幅は0.6~2.6cmで、長・幅比は2.8~9.7、雄ずいの1束当たりの本数は6~14個、束の爪の長さは1~1.6㎜である。カユプテ油のおもな製造原料で植栽される。
 (2)Melaleuca cajuputi POWELL subsp.cumingiana BARLOW:カリマンタン南部、ジャワ西部、スマトラ、マレー半島、ベトナム、タイ、ビルマに生ずる。葉の幅は1.5~3.9cmで、長・幅比は2.2~2.9、雄ずいの1束当たりの本数は4~10個、束の爪の長さは2.1~3mmである。
 (3)Melaleuca cajuputi POWELL subsp.platyphylla BARLOW:オーストラリアのクイーンズランド、ニューギニア南部に生ずる。葉の幅は1.7~6cm、長・幅比は1.3~6.5である。雄ずいの1束当たり本数は8~12個、束の爪の長さは1.1~3.5㎜である。  
13.Melaleuca alternifolia CHEEL
 Melaleuca alternifolia CHEEL(異名 Melaleucalineariifolia J.E.SMITH var.alterniifolia MAIDEN et BETCHE)は広義の Melaleuca leucadendron LINNAEUS の中に含められるが、ここではその狭義のものとは別種としてあげる。オーストラリアのニューサウスウェールズ東北部、クイーンズランド東部の沿海地域に生じ、植栽もされる。
 英名を tea tree,ti-tree,Australian tea tree という。
 常緑高木である。葉の精油含有量は約3%で多く、葉を蒸留して tea tree oil が得られる。この精油の主成分はテルピネオール、シネオールなどであるが、前者が多く後者が少ないものが良品質とされる。そのほかサピネン、リモネン、テルピネン、テルピノレンなどが含まれる。精油は淡黄色を呈し、ニクズク様の爽やかな香りを もち、無刺戟性で毒性がなく滲透性が大きい。殺菌力はきわめて強くフェノール、クレゾールに匹敵するとされる。扁桃腺炎、口内炎などのうがい薬、皮膚の炎症、タムシなどの皮膚病その他の医療に用いられ、消毒剤、薬用石けん、工業用溶剤などにも 使用される。melaleuca oil 合成品のコストの増大に対応する将来有望な供給源になるものとも考えられている。  
14.Melaleuca quinquenervia S.T.BLAKE の概要
 Melaleuca quinquenervia S.T.BLAKE(異名 Melaleuca viridiflora SOLANDER ex GAERTNER var.rubriflora BRONGNIART et GRIS,Metrosideros quinquenervia CAVANILLES)は広義の Melaleuca leucadendron LINNAEUS の中に含められるが、ここではその狭義のものとは別種としてあげられる。
 オーストラリアのニューサウスウェールズ東部、クイーンズランド東部の沿海地域、ニューギニア南部と近隣の島嶼、ニューカレドニアに分布し、海岸の沼沢地や低地に生ずる。またアメリカ・フロリダやハワイなどの湿地にも帰化して野生化している 。
 英名を five-veined paperbark,broad-leaved paperbark,broad-leaved tea tree,tea tree という。
 高さ4~12m、ときに25mまでになる常緑高木ときに低木状である。樹皮は白色に近いか薄褐色で、暗色の斑がある。薄い紙質の層からなり、厚さは2cm以上、外層は粗い裂片で剥げる paperbark である。葉は互生し、皮針形、倒皮針形、長楕円形で、多くは長さ4~9cm、幅0.8~3cm、両端に狭まる。革質で、あまり薄くなく、3~5本の縦脉があるが、おもに5本、他の脉理はそれより不顕著、腺点はときに不顕著である。葉柄は長さ0.3~0.8cmで捩れ る。
 いわゆる穂状花序が単出または2~3個が束出して頂生、ときに上部の葉腋1~3個処から単出して、密に花をつける。花序の長さは3~10cm、幅2.5~3.5cmで、花序軸に絹状細軟毛を布く。がく裂片は広い三角状卵形で長さ1.2~1.5㎜、花弁は長さ2.5 ~3㎜で、黄白色を呈する。雄ずい束5個は幅が広い柄部があって、多数の花糸がそれぞれからわかれ出る。長さは10~15㎜である。花糸は通常白色または黄白色、まれに緑色あるいは紅色を帯びる。さく(蒴)果は球形から短い円筒形で長さ3~4mm、やや 木質で、頂端の開口部につく弁片はいくらか超出する。果実は1年間まで樹上に残る。  
15.Melaleuca quinquenervia S.T.BLAKE の材の組織、性質と材その他の利用
 散孔材。辺材は紅白色、心材は灰紅色を呈する。木理はふつう交走する。
 道管はすべて単独で、分布数は4~6/m㎡、断面は円形から広楕円形を呈し、径は0.10~0.21㎜である。せん孔板は水平ないし少し傾斜し、単せん孔をもつ。チロースは見られない。
 材の基礎組織をなす繊維〔多分繊維状仮道管〕の径は0.01~0.02㎜、 壁厚は0.004~0.007㎜である。軸方向柔組織では、周囲柔組織が0~1細胞層あって、ときに翼状柔組織となり接線方向に6個細胞まで連なる。また1~2個ずつの柔細胞で単独で基礎組織中に散在する。柔細胞の径は0.01~0.04㎜、壁厚は0.01~0.02㎜で ある。
 放射組織は1~2細胞幅、1~25細胞高である、その構成は異性で、単列のものおよび多列のものの両端1~3層の単列部は大型細胞で、方形細胞または丈が低い直立細胞の層、他は平状細胞の層である。細胞内に濃色の内容物が多い。
 材の気乾比 重に0.72~0.80の記載がある。材中に0.2~0.95%のシリカを含むので、製材で鋸歯の鈍化、鉋削などの切削で刃具の鈍化が速く、加工は困難である。また乾燥は困難、接着は良好とされる。心材は水中および地中でも耐朽性があり、辺材はキクイムシ の食害を受けない。
 材はおもに丸太で、一般の粗構造材、家具の柱・梁・土台など、柵柱、鉱山用材、枕木その他に使用され、また燃材として広く用いられる。かつて葉から芳香性の精油を採取したことがあったが、合成品の出現で現在はあまり行われ ていない。  
16.ニアウリカユプテ
 ニアウリカユプテ Melaleuca viridiflora SOLANDER ex GAERTNER は広義の Melaleuca leucadendron LINNAEUS の中に含められるが、ここではその狭義のものとは別種としてあげる。オーストラリアのクイーンズランド・北部地方と西オーストラリアの北部、ニューカレドニアに自生する。またマレーシア・インドネシア地域で植栽される。オーストラリアで英名 green paperbark,broad-leaved paperbark,coarse-leaved paperbark,paperbark,ニューカレドニアで英名 niaouli cajeput,土名 niaouli という。
 常緑の高さ1~2mのばらばらした低木から高さ18m、直径35cmまでのかなり直幹性ある中高木となる。樹皮は褐色を帯びた白色系の紙層状で、フレークの大きさとそのパターンは種々である。若枝に伏生した毛をもつ。葉は楕円形から広楕円形、 ときに倒卵形などで、幅が広く長さ6~22cm、幅2.5~6cmを示す。やや厚い革質で、初め微細絹毛をもつが、年とともに無毛に近くなる。縦脉は5~7本あって、これらを連結する脉理のあるものとともに顕著である。葉柄の長さは1cmほどである。
 おもに頂生で穂状花序1~3個を束出する。多くは長さ7~12cm、幅4~6cm、先端は花後も生長を続ける。花は白色で、しばしば緑色または紅色を帯びる。花部は全体的にやや大きい。雄ずいの束の長さはおおよそ18~23㎜である。さく(蒴)果は無梗 で、円錐形から円筒形、長さ3.5~5㎜、幅4.5~7㎜、切頭、開口部は可視である。
 材は淡灰紅色を呈し、気乾比重0.80~0.90の記載がある。材質は強靭であるが、切削加工などはほぼ容易である。建築を含む構造材、器具、土木材その他燃材に利 用される。
 ニューカレドニアで葉から得られる精油はニアウリ油(niaouli oil)またはゴメノール(gomenol)という。シネオール35~60%、α-テルピネオール30%を含み、一般のカユプテ油に類似していて、選鉱油、薬用に供される。  
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