v2.3

平井信二先生の樹木、木材研究

レンガス属の樹木(その2)
6.Gluta velutina BLUME
Gluta velutina BLUME(異名Gluta coarctata HOOKER FIL.)はビルマ、タイ、ベトナム、マレー半島、バンカ、スマトラ、ジャワ西部、ボルネオに分布する。英名をwater rengas,タイでraknam,ベトナムでcay son dai,マレーでrengas,rengas ayaer,rengas pantai,ブルネイでrengas,インドシナでrengas pendekという。
 高さ20m、直径50cmまでになる常緑大低木ないし高木で、しばしば分岐の多い支柱根と、短くて鋭い板根をもつ。樹皮は淡紅褐色を呈し、平滑ないし微小な鱗片状となる。葉は長楕円形、倒皮針形などで長さ12~32cm、幅5~8cm、鋭頭な いし鋭尖頭、基部は円形、鈍形などを呈する。革質、無毛。側脉は16~32対あり、葉柄はきわめて短く長さ1cmまでである。若葉は紅色を呈する。
 花は不規則に開裂するがくをもち、花弁5個は倒皮針形で長さ7~9㎜、白色ときに淡紅色を呈する。花 托は円筒形で長さ1.5~2㎜、雄ずいは5個、子房は無毛である。果実はほぼ球形で径5~7.5cm、淡褐色を呈してふけ状物を被むり、不規則なひだ状の隆起物をとくに基部付近につける。長さ5㎜の短い柄があり、残存増大して翼となる花弁はつけない。子葉 は離生する。
 心材は淡紅色を呈し、材の気乾比重は0.32というきわめて低い値が記載されている。材はrengas として利用され、家具その他に用いられるが、一般に樹は小さい。
 樹幹を切りつけて滲出する樹液から塗料が得られる。種子は食べられるというが、樹皮その他にかぶれを起こす有毒成分を含むので確認を要するとされている。  
7.ビルマウルシの概要
 ビルマウルシGluta usitata DING HOU(異名Melanorrhoea usitata WALLICH)はインド、ビルマ、タイ、インドシナに生じ、英名を Burmese lacquer tree, Burrmese varnish tree,black varnish tree,lignum-vitae of Peguといい、インドで khen,sootham,ビルマでthitsi,kiahong,タイで rak,hak という。
 高さ20m、直径70cmまで、ときに1.2mまでになる落葉高木である。樹皮は暗灰色を呈し、若枝に細軟毛をもつ。葉は倒卵形、倒皮針形などで、長さ15~35cm、幅10~15cm、鋭頭などを呈し、基部は楔形となり葉柄に流れてやや翼状となる。葉の下面に 細軟毛を布き、側脉は28~30対、葉柄は長さ1.3~2.5cmで細軟毛をもつ。
 円錐花序は長さ30cmほどで花序軸に細軟毛を布く。花の径は12㎜ほど、花弁は5ときに6個あり、白色でがくとともに細軟毛があり、雄ずいは多数である。果実はほぼ球形で径0.8~1.3cm、紅色を呈し、平滑、長さ8㎜ほどの太い柄をもつ。花弁が残存増 大して長さ5~10cmの線状長楕円形の翼になり、果柄の下について星状に開出する。  
8.ビルマウルシの材の組織、性質と材その他の利用
 散孔材。辺・心材の区別は明瞭で、心材は暗紅色などを呈し黄色などの縞が出る。時を経て著しく暗色となる。
 道管は単独のものが多く、分布数は2~3/m㎡、単独道管の断面形は円形、広楕円形、道管の径は0.13~0.32㎜であるせん孔板は水平ないし 少し傾斜し、単せん孔をもつ。チロースを多く含む。
 材の基礎組織をなす真正木繊維または繊維状仮道管の径は0.01~0.02㎜、壁厚は0.003~0.005㎜である。場所によって繊維細胞内に着色した樹脂様物質を多く含むものがある。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織は不明瞭、不完全で0~1細胞層、帯状柔組織 は顕著で放射方向に2~6細胞層あり、その輪廓はやや不規則で波状などを呈し、分岐するもの、さらに内外輪が連結するものがあり、出現間隔は不規則である。柔細胞の径は0.01~0.03㎜、壁厚は0.001~0.002㎜で、細胞内に樹脂様物質を含むものがある 。
 放射組織は1細胞幅および部分的2細胞幅で、2~15細胞高である。水平細胞間道を含むものは紡錘形となり、中央付近で3~4細胞幅、高さも13~20細胞高となる。その構成はやや異性で、軸方向の端部のおもに1層がときに方形細胞またはこれと同高で放 射方向の長さが短い大型の平状細胞、他は通常の小型の平状細胞層からなるが、これらの細胞型は移行的である。また小型の平状細胞のみからなる同性のものもある。細胞内には樹脂様物質を含む。
 水平細胞間道は同属の他種にくらべてやや多く出現す る。比較的小さく、軸方向の高さ、接線方向の幅ともに0.03~0.04㎜である。エピセリウムの細胞は小さく、1~2層をなす。
 材の気乾比重に0.85~0.99の記載があり、重硬で、乾燥と加工は困難である。材の耐朽性は高い。材は家屋の柱などの構造材と 内装材、家具、工具の柄などの器具、農機具、橋梁・枕木・杭木・木煉瓦、銃床、錨ストック、施削物その他に用いられる。
 樹幹を切り付けて採取される樹液の主成分はチチオール(thitsiol,C(23)H(36)O(2))でビルマ漆が得られる。木材を始め鉄、石材、皮革の塗料に、また紙や布の防水加工にも用いられる。また現地の民間薬として駆虫その他に使われる。  
9.チンネベリ・レッドウッド
 チンネベリ・レッドウッド Gluta travancorica BEDDOME はインド産で、英名を Tinnevelli redwood,インドでshenkrani,shencyrungi,shenchanthanam という。
 高さ30mになる常緑高木で、樹皮は厚く灰紅色を呈し、平滑である。葉は楕円形または倒卵形で長さ10~15cm、基部は狭くなってきわめて短い葉柄に続く。円錐花序の軸には白色の細軟毛をつける。花は黄白色を呈する。果実は球形に近いが長 さより幅が大きく、径は3.1~6.3cmで褐色を呈する。
 散孔材。辺・心材の区別は明瞭で、辺材は淡灰紅色、心材は紅色に暗色の縞が出る。
 道管は単独および放射方向に3個までが接続し、分布数は3~6/m㎡である。単独道管の断面形は円形、楕円形で、道管の径は0.04~0.22㎜である。せん孔板は水平ないし少し傾斜し、単せん孔をもつ。接続道管の間の有縁壁孔は交互配列をし、道管・放 射組織間の壁孔は長楕円形などの大きい単壁孔対で、不規則な方向に柵状などに並ぶ。道管内にチロースが多い。
 材の基礎組織を形成するのは真正木繊維または繊維状仮道管で、径は0.01~0.02㎜、壁厚は0.003~0.004mmである。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織は同属の他種にくらべていくらかよく発達し、おもに1細胞層、ときに0、2細胞層である。帯状柔組織は 明瞭で放射方向に1~4細胞層あり、やや波状をなし、ときに分断する。その出現間隔は不規則である。柔細胞の径は0.01~0.03㎜、壁厚は0.001~0.002㎜である。
 放射組織はほとんど1、部分的に2細胞幅で、2~18細胞高ある。水平細胞間道を内包するも のは紡錘形となり、その部分で4細胞幅まで、高さも大きくなる。
 構成は平伏細胞からなる同性で、細胞内に樹脂様物質の含有は比較的少ない。
 水平細胞間道は紡錘形放射組織の中央に1個あり、軸方向の高さ0.06㎜、接線方向の幅0.04㎜ほどである。エピセリウムの細胞は小さく1~2層をなす。
 材の気乾比重に0.74~0.93の記載がある。材は建築構造材・内装材、家具、器具、施削物その他に用いられる。樹幹を切りつけて得られる樹脂質の樹液は塗装料とされる。  
10.Glua tavoyana WALLICH ex HOOKERFIL,
 Glua tavoyana WALLICH ex HOOKERFIL,はビルマ産で、同地で chay,thoomay,thayet thitsi という。
 高さ17mになる常緑高木で、若枝は細軟毛をもつ。葉は倒卵状楕円形ないし皮針形である。円錐花序は短く、花序軸に細軟毛を布く。花は長さ5㎜ほどで白色を呈し、がくに細軟毛をもつ。
 果実は球形で径約3.5cm、褐色を呈する。心材は深紅色を呈し、濃色部と淡色部とが縞になる。木理は交走し、肌目はやや精で仕上げ面は美しい。材の気乾比重に0.77~0.96の記載がある。キャビネットなどの家具、建築内装材、器具、木船の竜骨 材、施削物その他に用いられる。  
11.Gluta glabra(WALLICH)
 Gluta glabra(WALLICH(異名Melanorrhoea glabra(WALLICH))はビルマ、タイに産し、ビルマで thitsi という。
 高木で、葉は無毛である。果実は長さ25~39㎜の細い柄をもち、花弁は残存増大し線形またはへら形で長さ5~6.3cmの翼となる。このものと思われるものの材はビルマウルシ Glutea usitata DING HOU にくらべて淡色、道管の中はより空で、帯状柔組織の同心円帯の間隔がより広いとの記載がある。  
12.Gulta turtur MARCHAND
Gulta turtur MARCHAND はタイ産の高木で現地名を rak という。J.ILIC:『CSIRO Atlas of Hardwoods』所載の材の顕微鏡写.真によってその組織の概要をあげる。
 散孔材。道管は単独および放射方向に数個接続、また小径道管および接線方向に2個接続のものを挟んでちょうちん状に12個まで接続するものがある。分布数は小径のものも含んで12 ~16/m㎡である。単独道管の断面形は円形、広楕円形で、道管の径はふつう0.05~0.30㎜、小径のものは0.03㎜まである。せん孔板は少し傾斜し、単せん孔をもつ。道管、放射組織間の壁孔は大きくて窓状などの形を示す単壁孔対である。チロースが多い 。
 材の基礎組織をなす真正木繊維または繊維状仮道管の径は0.01~0.02㎜、壁厚は0.002~0.004㎜ほどである。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織はおおよそ0~2細胞層でやや不明瞭であるが、団塊状あるいはちょうちん状に接続する導管群の周辺に数層 の柔組織があるものがある。帯状柔組織は明瞭で放射方向に2~4ときに5細胞層ある。柔細胞の径は0.015~0.03㎜、壁厚は0.001~0.002㎜ほどである。
 放射組織はほとんど1細胞幅で、4~18細胞高である。水平細胞間道を内包するものは紡錘形となり、 その部分で4細胞幅、高さも大きくなる。構成は平伏細胞からなる同性である。細胞内に着色樹脂様物質は少ない。
 水平細胞間道は紡錘形放射組織の中に含まれており、軸方向の高さ0.05mm、接線方向の幅0.03㎜ほどで、エピセリウムの細胞は小さくほぼ 2層をなしている。
 材は rengas として利用されると推測される。  
13.ムラサキワカバノキ
 ムラサキワカバノキ(ペナン・レンガスGluta elegans KURZ はビルマ南部、タイ半島部、マレー半島北部に分布し、とくにペナンに多い。英名を Penang rengas,タイで sak,マレーで rengas,rengas ayamという。
 高さ27m、直径70cmまでになる高木で、板根は小さいかまたは出ない。また樹幹に僅かに溝が出る。樹皮は灰紅色を呈し、平滑ないし鱗片状である。葉は楕円形、倒皮針形で長さ6~17.5cm、幅2~6.5cm、鋭尖頭または鈍頭、基部楔形 を示す。革質で、無毛、側脉は7~14対あり、葉柄の長さは1.5~2.5cmである。若葉は美しい紫色を呈する。
 円錐花序は長さ4~5cmである。がくは不規則に開裂し、花弁は線状皮針形で長さ11~15㎜、白色を呈する。花托は円筒状で長さ5~6㎜、雄ず いは5個、子房は無毛である。果実は斜卵形または広楕円形で長さ4.5cmまであり、光沢のある黒色を呈する。長さ7.5㎜までの柄が果実の底に偏よってつき、残存増大する花弁の翼はつけない。子葉は不完全に合着する。
 材の気乾比重に0.57~0.68の 記載がある。材は rengas として用いられる。材を鉄分を含む土中に埋めておくとコクタン Diospyros spp.に似た色となるので、とくに家具に賞用される。
 材はまた媒染剤の種類によって異なる橙色から黒色の染料に用いられる。  
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