v2.8

平井信二先生の樹木、木材研究

レンガス属の樹木(その4)
27.Gluta sabahana DING HOU
 Gluta sabahana DING HOUはボルネオのサバ産で、現地名をrengas、rengas manggaという。
 高さ30m、直径60cmまでになる高木で、しばしば板根があるがきわめて小さく高さ0.5mまでである。樹皮は暗褐色を呈し平滑である。葉は倒皮針形、卵状長楕円形、長楕円形で、長さ13~33cm、幅3~8cm、鋭尖頭ときに鋭頭を示す。無毛で、側脉は9~15 対、葉柄は短くふつう長さ0.75cmまであるが、ときに1.5cmまでのものがある。
 花は不規則に開裂するがくをもち、花弁の長さは5~7.5mmで、白色または淡黄色を呈する。花托は円筒形で長さ約1mm、雄ずいは5ときに7個まで、子房は細軟毛を被む る。果実は斜広楕円形で長さ9cmまで、褐色を呈して、ふけ状物をつける。不明瞭な柄があり、残存増大して翼となる花弁をつけない。子葉は不完全に合着する。
 材はrengasとして利用されると推定される。  
28.Gluta speciosa DING HOU
 Gluta speciosa DING HOU(異名Melano rrhoea speciosa RIDLEY)はボルネオのサラワク、ブルネイ産で、サラワクでrengas、rengas buluという。
 高さ40m、直径80cmまでになるやや大高木で、高さ1.5mまでの板根が出る。樹皮は暗褐色を呈し、不規則な割れ目が入る。葉は倒卵形で長さ5~17.5cm、幅3~9cm、円頭または微凹頭を示す。下面に軟細毛を布き、側脉は10~22対、葉柄の長さは2cmまで である。
 花は周円開裂をするがくをもち、花弁は長さ10~15mm、白色で基部は紅色を帯びる。花托はほぼ球形で径約1.5mm雄ずいは多数、子房に密毛がある。果実はほぼ球形で径は3cmまで、平滑である。長さ約5mmの短い柄をもち、残存増大して翼となる花弁を つけない。子葉は離生する。
 心材は淡紅色を呈する。材はrengasとして利用されると推定される。  
29.Gluta torquata TARDIEU-BLOTの概要
 Gluta torquata TARDIEU-BLOT(異名Melanorrhoea torquata KING)マレー半島、スマトラに産し、マレーでrengas、rengsa kerbau jalang、インドネシアでsitorngom horbojalangという。
 高さ30mまで、直径80cm、最大1.25mまでになる高木で、高さ3mまでの険しい板根が出る。樹皮は淡褐色を呈し、平滑または微細ないぼ状凹凸がある。葉は倒卵形ときに倒卵状長楕円形または広楕円形で、長さ15~24、ときに35cmまで、幅9~18cm、円頭 または微凹頭、基部は狭くなって葉柄の基部まで翼状に流れる。革質で、通常無毛、側脉は16~29対あり、葉柄の長さは2cmまでである。
 円錐花序は小枝の頂端近くから出て長さ15~20cm、花序軸に細軟毛を布く。花梗の長さは2.5~5mmである。がくは 不規則に開裂し、萎れて花梗を囲むルーズなカラーのようになって捩れる。花弁5個は楕円形で長さ5~6mm、白色を呈し、細軟毛を密布する。花托は円筒形で長さ約1.5mm、雄ずいは5個で、子房は有毛である。果実はほぼ球形か扁球形で径は4cmまである。
 褐色を呈し、平滑、長さ約10mmの柄を持ち、残存増大する花弁の翼はつけない。子葉は離生する。  
30.Gluta torquata TARDIEU-BLOTの材の組織、性質と利用
 散孔材。道管は単独および放射方向に2まれに3個が接続し、分布数は2~3/m㎡である。単独道管の断面形は円形、楕円形などで、道管の径は0.12~0.28mm、せん孔板は水平ないしやや傾斜し、単せん孔をもつ。接続道管の間の有縁壁孔は交互配列をし、 道管・放射組織間の壁孔は大きくて形が不規則な窓状などの単壁孔である。道管内にチロースをもつ。
 材の基礎組織をなす真正木繊維または繊維状仮道管の径は0.01~0.02mm、壁厚は0.003~0.004mmである。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織は発達が少なく不明瞭で0~1、まれに2細胞層、帯状柔組織は明瞭で放射方向に2~4細胞層あり、同心円状に不規則な間隔をおいて出現する。柔細胞の径は0.01~0.03mm、壁厚は0.001~0.002である。
 放射組織は普通のものは1細胞幅で、ときに部分的2細胞幅、ふつう5~20細胞高であるが、まれに40細胞高までのものがある。水平細胞間道を内包するものは断面が紡錘形となり、その部分で6細胞幅まで、高さも大きくなる。構成は平状細胞からなる同 性である。細胞内に着色した樹脂様物質を含む。
 水平細胞間道は紡錘形放射組織の中央に1個あり、軸方向の高さ0.05~0.12mm、接線方向の幅0.04~0.10mmで、エピセリウム細胞は小さく1~2層をなす。
 材の気乾比重は0.63~0.80の記載があり、生材から気乾までの収縮率は接線方向1.8%、放射方向1.0%でその値は小さい。強度的数値の例では気乾比重0.76のもので、縦圧縮強さ505kg/c㎡、横圧縮強さ77kg/c㎡、曲げ強さ1132kg/c㎡、曲げヤ ング係数15.2×10(4)kg/c㎡、せん断強さ133kg/c㎡、ヤンカ硬さは縦断面631kgである。
 材の耐朽性は接地条件では低い。防腐薬剤の注入は心材では著しく困難で、辺材では容易である。材はrengasとして利用されるものと推定される。  
31.ツクバネウルシの概要
 ツクネバウルシGluta wallichii DING HOU(異名Melanorrhoea wallichii HOOKER FIL.、Melanorrhoea maingayi HOOKER FIL.、Melanorrhoea woodsiana SCORTECHINI ex KURZ)はマレー半島、スマトラ、ボルネオに生じ、普通に見られる。英名をWallich's rengas、common rengas、Strait's mahogany、Singapore mahogany、マレーでrengas、rengas kerbau jalang、rengas burung、rengas sumpah biawak、rengas manau、rengas manuk、 インドネシアでrengas、rengas tjujung manuk、rengas tjujungという。
 高さ45m、直径90cmまでになる大高木で、高さ4mまでの板根が出る。樹皮は灰褐色を呈し、割れ目が入る。葉は倒卵状長楕円形、楕円状皮針形または楕円形で、長さ8.5~34.5cm、幅4~15cm、鈍頭ないし鋭尖頭ときに微凹頭、基部は?形などを呈する。革 質で、無毛または下面に細軟毛があり、側脉は9~24対、葉柄の長さは2.5~6cmである。
 円錐花序は長さ30cm以上あり、花序軸に細綿毛を密布する。花は不規則に開裂するがくをもち、花弁5個は長楕円形で長さ4~7mm、白色を呈し、細綿毛を密布す る。花托はクッション様にふくらみ径約1.5mm、雄ずいは5個、子房は有毛である。果実は卵形、楕円形で長さ1.5cmまで、紅褐色を呈し、平滑で、不明瞭な柄をもつ。花弁は残存増大して長さ8cmまでの狭楕円形の翼になり紅色を呈する。子葉は離生する。  
32.ツクバネウルシの材の組織、性質と材その他の利用
 散孔材。辺・心材の区別は明瞭で、辺材は黄白色、心材は紅色、暗褐色などを呈し暗色の縞が出る。J.ILIC:『CSIRO Atlas of Hardwoods』所載の材の顕微鏡写.真によって材の組織の概要をあげる。
 道管は単独および放射方向に4個までが接続、また接線方向に2個接続する小径道管を伴う。分布数は1~6/m㎡である。単独道管の断面形は広楕円形などで、道管の径はふつう0.09~0.25mm、小径道管は0.04mmまである。せん孔板は傾斜し、単せん孔をも つ。道管、放射組織間の壁孔はほぼ単壁孔で、大きく形は不規則で窓状などがあり、配列も種々で軸方向には階段状に4段まで、また柵状、蜂窩状のものなどがある。チロースを含む。
 材の基礎組織をなす真正木繊維または繊維状仮道管の径は0.01~0.02 5mm、壁厚は0.002~0.004mmほどである。
 軸方向柔組織は発達がきわめて少なく、周囲柔組織は不完全で0~1細胞層、帯状柔組織は組織写.真には現れていない。柔細胞の径は0.01~0.025mm、壁厚は0.001~0.002mmほどである。
 放射組織は1ときに部分的 2細胞幅、2~18細胞高、水平細胞間道を含むものはその部分で4細胞幅まであり高さも大きくなる。構成はほとんどが平伏細胞からなる同性であるが、ときに軸方向の端部が丈が低い直立細胞または方形細胞あるいはそれと同高で放射方向の長さが短い大 型の平伏細胞の層で、他は通常の小型の平状細胞からなるものが見られる。細胞内に樹脂様物質の含有は少ない。
 水平細胞間道は放射組織に内包されて、軸方向の長さ0.06mm、接線方向の幅0.04mmほどである。
 材の気軽比重に0.47~0.98の範囲の記 載があるが、ふつうやや重硬である。心材は耐朽性があり、乾材白蟻に対しても抵抗性があるという。
 材はregas材の主要な供給源であり、とくに家具材として評価されるが、また家屋建築・橋梁の柱と梁、建築内装・造作材、木船の竜骨在など、器具、枕木、旋削物その他の用途があり、化粧ベニヤ張り、合板の形でも用いられる。中国人ははかりの桿 に用いる。果実は他物と混ぜて矢毒、投槍毒に用いられ、根と葉は地方的な民間薬とされる。  
33.Gluta wrayi KING
 Gluta wrayi KING(異名Gluta virosa RLDLEY)はタイ、ベトナム南部、マレー半島産で、タイでrak、rak bai nui、ベトナムでcay gon gua、マレーでrenga、rengas ayer、rengas kerbau jalangという。
 高さ30m、直径85cmまでなる高木で、板根は高さ3mまでのものがありやや太い。樹皮は灰褐色、緑褐色または橙褐色を呈し、平滑ないし浅いいぼ状凹凸がある。葉は楕円形、楕円状皮針形で長さ6~26cm、幅2~9cm、鋭尖頭、基部は狭い楔形を示す。革質 で、無毛、側脉は9~15対あり、葉柄の長さは1.5~4.5cmである。
 円錐花序は長さ7.5cmほどで、多数の花をつけ、花序軸に細軟毛がある。花は不規則に開裂するがくをもち、花弁5個は長楕円形で長さ10~13mm、白色で外面に細軟毛を布く。花托は円筒形で長さ1.5~4mm、雄ずいは5ときに6個、子房に細軟毛を密布する 。果実は楕円形で長さ6~7cm、褐色を呈しふけ状物を被むる。不明瞭な柄があり、残存増大して翼となる花弁をつけない。子葉は不完全に合着する。
 心材は深紅色で暗色の縞が出て美しい。家具に賞用される。  
34.Gluta papuana DING HOUの概要
 Gluta papuana DING HOUはパプア・ニューギニア西南部産で、現地名をhekakoroという。
 高さ31m、直径50cmまでになる高木で、しばしば高さ3mまでの険しい板根が現れる。樹皮は灰褐色ないし暗紅色を呈し、ほぼ平滑からやや鱗片状となるものがある。葉は楕円形、広楕円 形または倒卵状長楕円形で、長さ7~20.5cm、幅3~10.5cm、円頭または微凹頭、まれに急尖頭を示す。無毛で、側脉は12~17対あり、葉柄の長さは2.5cmまでである。
 花は不規則に開裂するがくをもち、花弁は長さ6.5~7.5mmで白色を呈する。花托は円筒形で長さ約1mm、雄ずいは5ときに6個、子房は無毛である。果実は腎臓形に近く長さ8cmまで、淡褐色ないし暗褐色または青黒色を呈し、平滑である。不明瞭な柄をも つ。残存し増大して翼となる花弁をつけない。子葉は不完全に合着する。  
35.Gluta papuana DING HOUの材の組織、性質と利用
 散孔材。辺・心材の区別は明瞭で、辺材は黄白色、薄褐色など、心材は紅色、橙紅色、紅褐色などで、しばしば濃色の縞がある。木理は交走し、肌目はやや粗ないしやや精である。生長輪は明瞭でない。
 道管は単独および放射方向に2~3、ときに5個までが接続し、分布数は2~7/m㎡である。単独道管の断面形は円形などで、道管の径はふつう0.10~0.32mmであるが、小径の0.04mmまでのものがある。せん孔板は水平ないしやや傾斜し、単せん孔をもつ 。接続道管の間の有縁壁孔は交互配列をする。道管・放射組織の間のものは大形で不規則な形をした単壁孔であり、配列もやや不規則で柵状などを呈する。道管内にはチロースがよく発達している。
 材の基礎組織を形成するもは真正木繊維またはやや不明瞭な有縁壁孔をもつ繊維状仮道管で、径は0.01~0.025mm、壁厚は0.003~0.004mmである。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織は薄くしばしば不完全で0~1細胞層である。帯状柔組織は明瞭で、放射方向に2~5細胞層である。柔細胞の径は0.01~0.03mm、壁厚は0.001~0.002mmで、樹脂様の着色物質を含むものと、ほとんど含まないものとがある。
 放射組織は多くは1細胞幅、部分的に2まれに3細胞幅で3~20細胞高であるが、水平細胞間道を内包するものは断面が紡錘形となり、その部分で5細胞幅まで、高さもやや高くなる。構成は平状細胞からなる同性である。細胞内に着色した樹脂様物質を含 み、またシリカも多い。
 水平細胞間道は紡錘形放射組織の中央に内包され、その径は0.016~0.024mmである。
 材の気乾比重に0.48~0.64の記載がある。材の耐朽性は中位で、キクイムシの食害があるとされている。心材の防腐薬剤注入は困難である。
 材の利用は軽構造材、建築内装・造作材、家具、施削物などで、現地ではカヌーの竜骨材、彫刻に用いられる。   平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る