v2.3

平井信二先生の樹木、木材研究

コウエンボク属の樹木(その2)
4.コウエンボクの材の組織、性質と材その他の利用
 材は散孔材。辺・心材の区別はほぼ明瞭またはやや不明瞭で、淡紅褐色、紅褐色を呈する。生長輪はやや不明瞭である。
 木理は通直またはやや不規則、肌目は中位~やや粗である。
 道管は単独およびおもに放射方向に2~3個が接続するが、ときに数個がやや塊状に集合接続する。分布数は比較的小さく、道管の大きさは中位からやや大である。単せん孔をもつ。中に樹脂様物質を含むものがある。材の基礎組織は真正木繊維が構成す る。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織が明らかであるが、翼状ないし連合翼状柔組織となるものは少ない。放射方向に2~3細胞層のターミナル柔組織が見られる。
 放射組織は1~3細胞幅、2~20細胞高で、その構成は平伏細胞からなる同性である。
 材の気乾比重は0.50~0.77の範囲の記載があり、通常0.65~0.70程度が平均的と考えられ、やや重硬という程度である。
 比較的強く、加工はあまり困難でない。心材は比較的耐朽性があり、白蟻、キクイムシに対する抵抗性もややあるといわれる。
 建築造作材、家具、器具、施削物、彫刻などに使われるが、市場材として重要でない。
 樹皮はインドネシア・バチックの布を黄褐色、褐色に染めるソガ染料として、コヒルギ Ceriops tagal C.B.Robinsonヒルギ科)、カカツガユ Maclua cochinchinensis CORNER var.geroutogea OHASHIクワ科)と並んで主要な原料となっている。
 また皮のなめしにも用いられる。
 樹皮の滲出液は筋肉痛、捻挫、できものに外用し、赤痢などの内服薬にも用いる。樹が優美で花が美しいので、庇陰樹、行道樹、庭園樹 として各地で広く植栽されている。  
5.Peltophorum dasyrachis KURZ ex BAKER
Peltophorum dasyrachis KURZ ex BAKER はインドシナ、タイ、マレー、スマトラ産で、インド洋西部のスコトラ島からも報告されている。
 英名は yellow batai,タイで nontri,ベトナムで hoang linh,lim xet,カンボジアで treasek,マレーで batai,jemerelang という。
 高木。枝の分岐は頂芽が伸びる単軸分岐で、類似種コウエンボク Peltophorum pterocarpum BACKER ex K.HEYNE のような整った傘形を呈せず、不規則な形となる。托葉は分岐が多くツノマタ状になり、しばしば残存性である。葉は互生する2回偶数羽状複葉で、羽片は4~9対、 小葉は中央羽片で11~16対、長さ1.3~3.5cm、幅0.5~0.8cmで両面に微細な毛をもつ。
 花は腋生の長さ20~35cmの総状花序につく。豆果はコエンボクより小さく、扁平で先端が鋭く突出し、しばしば葉の下に房をなしてぶら下がる。
 材は散孔材で、灰白色から淡肉紅色を呈する。材の気乾比重に0.48~0.82の範囲の記載がある。気乾比重0.56~0.67のもので、縦圧縮強さ480~600kg/c㎡、 曲げ強さ632~1,104kg/c㎡を示す。かなり耐朽性があるという。
 一般建築材、家具、器具その他に用いられ、鋪木に使うとの記事もある。樹皮はコーヒー、ココアの庇陰樹に植栽される。  
6.Peltophorum tonkinense GAGNEPAIN
    Peltophorum tonkinense GAGNEPAIN (異名 Peltophorum dasyrachis KURZ ex BAKER var.tonkinensis K.et S.S.LARSEN)は海南島、インドシナ産で、中国名は銀珠、油楠、双翼豆、田螺掩、ベトナムで hoang linh,lim xetという。
 高さ12~20m、ときに30m、直径80cmまでになる高木で、樹皮は灰黄褐色、ほぼ平滑である。若枝や花序などに銹色の細軟毛を布く。
 葉は互生する2回偶数羽状複葉で長さ15~35cm、羽片2~13対で長さ4~9cm、小葉は5~15対、長楕円形で長さ1.5~2.5cm、幅0.6~1cm、  円頭で頂端は微凹または微凸し、基部は楔形で左右不同である。
 枝端近くに長さ10~20cmの総状花序を出す。花は黄色で大きく芳香がある。花弁は倒卵状円形で長さ1.5cmほど、緑は波状を呈する。
 豆果は紡錘形で長さ8~13cm、中央の幅2.5~3cm、両端にテーパーし、両側に幅5~7㎜の翼をもつ。薄い革質、成熟して紅褐色、無毛である。中に種子3~4個を含む。  
7.アフリカン・ワットル
 アフリカン・ワットル Peltophorum africanum SONDER はアフリカ中部から南部にかけて分布する。英名は African wattle,weeping wattle,Rhodesian black wattle,西アフリカで huilboom という。
 高さ5~10mの小~中高木で、しばしば根元近くから分岐する。樹皮は褐色で、縦の割れ目が出て粗い。葉は互生する2回偶数羽状複葉で、羽片は5~7対、小葉は10~12対、ときに23対まであり、長楕円形で長さ0.7cm、幅0.4cmほど、円頭で頂端は 微小な毛状となり、基部は左右不同である。
 葉軸と葉柄に銹褐色の細軟毛を密布し、托葉は顕著だが早落性である。
 花は腋生の長さ約15cmの総状花序に密につき、鮮黄色を呈して大きく装飾的である。花序軸、花梗、がくに褐色の細軟毛がある。花弁の径は約2cmあり縁が縮れる。豆果は楕円形で 長さ10cm、幅2cmまでとなり、扁平で両端に狭くテーパーし、翼状の縁がある。
 ほぼ革質で、熟して暗褐色を呈し、密に群生して下垂する。
 材は散孔材。心材部分は少ないがほぼ黒色を呈する。材はおおよそ軽軟である。器具、家具、車両、彫刻などに用いられ、薪材として良質であるという。
 樹皮の浸出液を腹痛に内服し、また眼痛に外用する。樹は庭園樹、庇陰樹に植栽される。  
8.Peltophorum adnatum GRISEBACH
Peltophorum adnatum GRISEBACH は西インド諸島産である。英名の取引名は horse-flesh mahogany で、キューバで sabicu colorado,sabicu moruro,moruro abey という。また単に sabicu の名で輸出されたことがある。
 高さがしばしば30mまたはより以上になる高木で、樹皮はほぼ平滑であるが、細かい粒状物がある。
 心材は紅褐色でときに紫色を帯び、僅かに縞が出る。材の気乾比重に1.02の記載があり、きわめて重硬である。強いが脆いという。加工は困難で、耐 朽性は高い。
 重構造材、建築、家具、器具、車両、柵柱、枕木などに用いられる。  
9.Peltophorum vogelianum WALPERS
Peltophorum vogelianum WALPERS (異名 Peltophorum dubium TAUBERT)はアルゼンチン北部、パラグァイ、ウルグァイ産で、アルゼンチンで cavafistula,ibira-puita, パラグァイで ibirapyta,ウルグァイで arbol de artigas という。
 良い処では高さ40m、径2mに達するが、それ程でない処では高さ25m、直径1m以下の高木で、形は良くなく板根がでる。樹皮は暗褐色で粗い、葉は互生する2回偶数羽状複葉で長さ30~50cm、 羽片は7~21対あって長さ18~25cm、各羽片に小葉が13~30対つき、長楕円形、長さ0.5~0.8cmである。豆果は長い紡錘形で両端が細く尖がり、長さ5~9cmである。
 散孔材。材は淡紅褐色、紅褐色を呈し、しばしば暗紫色を帯びた縞がある。木理は交走し、ときに魚卵模様になるもく(杢)が出る。肌目はやや粗である。
 ときに不顕著なリップルマークが認められることがある。材の水浸出液は紫外線をあてると黄色の蛍光を発する。
 道管は単独および放射方向に2~3個が接続し、道管の接線方向の径は0.17㎜ほどで、分布数は少ない。単せん孔をもち、中に紅色の内容物を含む。
 基礎組織の繊維は隔離をもつ。軸方向柔組織では、周囲柔組織が発達し、翼部が短い翼状柔組織にもなるが、いすれも層が薄い。ときに短い連合翼柔組織が認められることがある。
 ターミナル柔組織も存在する。これらのうちには多室結晶細胞が認められる。放射組織は1~3細胞幅で単列のものは少ない。構成は平伏細胞からなる同性で、細胞内に紅色の内容物を含む。
 材の気乾比重に0.74~1.04も範囲の記載があり重硬である。乾燥はやや困難で狂いと干割れが出やすい。切削などの加工は比較的容易で、仕上げ面は良好である。材は耐朽性がある。
 アルゼンチンでは普通にある市場材で、一般構造材、建築造作材、家具、器具、車両、枕木、施削物その他に用いられる。樹皮と鋸屑は染料とされる。  
10.Peltophorum linnaei BENTHAM
 Peltophorum linnaei BENTHAMは熱帯アメリカ産の高木である。材は橙色を呈し、車両の幅、工芸品その他に用いられる。
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