v2.8

平井信二先生の樹木、木材研究

タイワンツバキ属の樹木
4.Gordonia excelsa BLUME
 この種はインド・シッキムおよびブータンから東方にビルマ、カシー山地、マレー半島、マレー諸島と分布が広く、シッキムでは海抜1,200~1,800m、サバ・キナバル山ではこの種と推定されるものが海抜1,500~2,000mの高地に生ずる。高木。葉は倒皮 針状長楕円形などで長さ4~25cm、鋭尖頭、基部は楔形、下面に絹毛がある。短い葉柄をもつ。材は淡紅色で重硬、気乾比重に0.65の記載があり、建築などに使われる。
 ジャバ産の変種Gordonia excelsa BLUME var.macrocarpa KOORDERS et VALETONの材の組織についてJ.W.MOLL&H.H.JANSSONIUSの記載があるのでその要点をあげる。散孔材で生長輪はときにかなり明らかである。道管はだいたい一様に分布するが1生長輪内では内側から外側に向かって密度を増す。ほとんど単独、まれに2個が接 続する。径は0.045~0.125mm。せん孔板は著しく傾斜し階段せん孔で階段数は15~25。材の基礎組織を形成しているのは繊維状仮道管で長さ2.5~3mm、径0.03~0.04mm、壁厚0.006~0.009mmである。軸方向柔組織は少なく繊維状仮道管の中に散在する単独 の柔細胞か、場所によっては1細胞層の短接線柔組織の形をなす。道管に近接するものにしばしば接合柔細胞(Konjugierte Holzparenchymzellen)が見られる。柔細胞の径は0.015~0.045mm、壁厚は、0.001mmである。ほとんど大部分の細胞に紅褐色の内容物を含む。放射組織は1~3、稀に4細胞幅で1~8細胞の繊維状仮道管を隔て、ほとんど常に道管に接触する。単列のものは約 5細胞高、多列のものは9~60細胞高である。構成は直立細胞と平伏細胞からなる異性で道管に近接する直立細胞にはしばしば接合柔細胞の形のものが見られる。細胞の内容に紅褐色の物質を含んでいる。
5.支那大陸産のタイワンツバキ属の樹木
 さきにタイワンツバキGordonia axillaris DIETRICHが支那中南部に産することを記したが、なお次のような種類が分布している。
  (1)Gordonia sinensis HEMSLEY et WILSON:四川省産で中国名を山枇花という。高さ12mに達する小高木。樹皮は灰色で浅い割れが入り小枝は無毛である。葉は革質で長楕円形または倒卵状楕円形、長さ10~17cm、基部を除いて鈍鋸歯があり上面無毛、下面は黄色を帯びる。葉柄の長さは約1. 5cm。花は枝端に短い総状をなして簇生し径4~5cmで白色、花梗の長さは約4cmである。萼片および花弁の基部外面に絹毛がある。さく果は球形に近く径1.2~1.5cmである。
  (2)Gordonia chrysantha COWAN:雲南省産で中国名を雲南山枇花という。常緑小高木。葉は厚い革質で長楕円形、長さ約8cm、鈍頭または微凸頭、狭い楔脚、縁は波状をなし無毛である。葉柄は長さ0.45cmで扁平。さく果は楕円形で初め灰色の短柔毛を密布する。
  (3)Gordonia hirta HANDEL- MAZZETTI:貴州省産で中国名は貴州山枇花という。低木で小枝に帯灰色の短柔毛がある。葉は革質に近く楕円状卵形で長さ約6cm、両端尖がり縁は波状をなし下面に帯灰褐色の粗毛がある。葉柄は長さ約1.9cmで扁平、短柔毛を布く。花は白色、花梗は短く 萼片に灰色の短柔毛を密生する。  
6.その他のアジア地域産のタイワンツバキ属の樹木
 これまで記したもの以外になお多数の種類がアジア南部および東南部から太平洋地域にかけて知られているが、ここではおもに木材に言及して記述されたものを拾ってあげてみる。
  (1)Gordonia obtusa WALLICH:インド南部産でnagettaという。中高木。樹皮は褐色で平滑である。材は紅白色から紅褐色で生長輪がかすかに認められる。散孔材で道管の径が小さく数がきわめて多く均一に散布する。放射組織は狭細で低いが数はきわめて多い。材の気乾比重 の値に0.64、0.69がある。構造用材に使われるが狂いが多いという。
 (2)Gordonia speciosa THWAITES:スリランカ産でmihiriya、ratatiyaという。樹皮は灰色で平滑。材は紅色で建築に使われる。
 (3)Gordonia elliptica GARDNER:スリランカ産。
 (4)Gordonia zeylanica WIGHT:スリランカ産。
 (5)Gordonia balansae PITARD:インドシナ、海南島産。
 (6)Gordonia tonkinensis PITARD:インドシナ産。
 (7)Gordonia grandiflora MERRILL:サバ産。径10~11cmの特に大きい花をつける。
 (8)Gordonia fragrans MERRILL:フィリピン、パプア・ニューギニア産。パプア・ニューギニアでgordoniaの名で扱われる。辺材淡紅色、心材紅褐色、気乾比重0.77で強度、耐朽性ともに中庸程度である。軽構造材、フローリング、家具などの用途がある。
 (9)Gordonia welborni ELMER:フィリピン産。  
7.Gordonia lasianthus ELLIS
 アメリカ東南部すなわらバージニア州南部からフロリダ州までの沿海の湿地、西はミシシッピー河流域まで分布する。loblolly bay、bay、holly bay、tan bay、black laurel、swamp laurelなどの名があり、和名にロブロリーツバキがあてられている。ときに高さ24m、直径50cmに達する常緑高木であるが、しばしば著しく小さくなって低木状をなすものがある。樹皮は紅褐色で深い溝がある。葉は倒卵状皮針形で長さ10~15cm、基部は 狭くなり縁に細鋸歯がある。短い葉柄をもつ。7~8月に開花し花は長い花梗上に単生し径5~6cmと大きく強い匂いを放つ。さく果は卵球形で種子に角形の点紋がある。
 散孔材。心材は淡紅色で黄褐色の辺材との境界はシャープでない。木理は通直、肌目は均―で精。気乾比重の値に0.47がありやや軽いが、重さの割合には強靭である。縦圧縮強さ387kg/cm2、曲げ強さ670kg/cm2、曲げヤング係数7.9×10(4)・kg/cm2が報 告されている。加工性は良好で耐朽性はやや低い。材は地方的に指物などの家具材、器具材に用いられるが市場的な重要性はない。樹皮のタンニンは鞣皮に用いられる。樹は風致樹として植栽される。
8.Gordonia alatamaha SARGENT
 この樹は1765年にジョージア州Altamaha河畔でJ.&W.BARTRAMが発見したものであるが、1790年以降は野生状態のものが全く見出されていない。それ故現在は植栽されているものだけという特異な種類である。学名の異名にはGordonia pubescens L'HERITIERのほかフランクリン大統領に献名して新属をたてたFranklinia alatamaha BARTRAMがあり、Franklin tree、frankliniaの名で呼ばれている。和名にはアラタマハツバキが用いられる。落葉高木で秋には紅葉する。高さ4.5~6mで寒地では低木になる。樹皮は薄く暗褐色を呈する。葉は長皮針形で長さ13~15cm、僅かに鋸葉があり質は厚く光沢があり有柄。9 ~10月に開花し上部葉腋に短梗をもつ花をつけその径は7~8cm、白色でよい匂いを放つ。さく果は球形で種子に翼が出ない。
 心材は褐色で白色または黄白色の辺材とはかなり明確に区画できる。木理は通直、肌目は均一できわめて精、やや重くて硬く強い。加工は比較的容易で仕上げ面は良好である。材の市場性はない。   平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る