v2.3

平井信二先生の樹木、木材研究

サキシマスオウノキ属の樹木
1.サキシマスオウノキ属の概要
 サキシマスオウノキHeritieraアオギリ科(Sterculiaceae)に属し、植物分類上では以前別属として扱われていたTarrietiamengkulangはこれに入る)とArgyrodendrontulip oak類)をいっしょに含めてしまうのが普通であるので、35種ほどが南および東南アジア、太平洋諸島、オーストラリア、熱帯アフリカに分布している。サキシマスオウノキHeritiera littoralis DRYANDERは唯一のわが国産の種類で、この属の分布の北端に位置している。属としての形態はサキシマスオウノキの項で記したこととほぼ同様であるが、要点を抽き出してあげる。常緑高木で下部は板根が発達する。葉は互生し有柄、掌状複葉または単葉 (複葉の側小葉が退化したものと見られる)、下面にはふつう鱗状毛が密生する。花は腋生の円錐花序について単性、ただし雌雄同株、花弁はなくがくは鐘状で4~5個のがく裂片がある。雄ずいは雌ずいと合着してずい体となり、雄花の雄ずいは8~10個 、ときに15個、雌花の子房は4または5、ときに6個、ほとんど離生し、それぞれ1個の卵子を含む。果実は分離した堅果で種子1個を含み裂開しない。竜骨状の隆起があり、その先がふつう翼となる。
 かつての狭義のHeritieraTarrietiaの違いは明確でない。前者は小~中高木で多くは単葉、果実の竜骨の先は発達が少なく小さい翼になる程度までである。材は一般に重硬からきわめて重硬で、緒方健氏によれば材の短接線柔組織(散在柔組織)がき わめてよく発達する。後者は大高木になるものが多く、単葉または掌状複葉で、果実にふつう大きく広がった翼をつける。材は中庸からやや重硬の程度が多い。緒方氏は単接線柔組織が比較的少なく周囲~翼状柔組織がやや厚いとしている。もう1つの旧 属Argyrodendronは大高木になり葉は掌状複葉、雄ずいは15個と多く、果実に大きい翼を持ち、材はやや重硬である。緒方氏は材に連合翼状~帯状柔組織が発達する点が他の2グループと大きく異なるとしている。
2.mengkulangの一般
 mengkulangはマレー名で、Heritiera属中のこの地域産の市場材としてある程度重要な1群の樹木ないし木材の名称である。Heritiera javanica KOSTERMANS、H.simplicifolia KOSTERMANS、H.borneensis KOSTERMANS、H.sumatrana KOSTERMANSがその主なものである。これらの多くはかつてTarrietia属としてHeritiera属から別のものとして扱われていた。各種は互いによく似ているのでmengkulangとして一括して材の組織・性質・利用について記す。なお材の組織についてはおもに緒 方健氏の記載によった。
 散孔材。辺心材の境界は明瞭または不明瞭、辺材は淡灰黄色~淡黄褐色、心材は褐色、橙褐色、紅褐色、暗褐色などでときに暗色の縞があり、しばしば金色の光沢を帯びる。生長輪はふつう不明瞭。木理はときに著しい交走のものがあり、肌目は一般に 粗い。ふつうやや疎な波状紋が見られるが、これは顕微鏡的構成要素のおおまかな階段状配列によるものである。一般に欠点が少ない。道管は単独および2~8個がおもに放射方向に接続、この道管群も1個と見ての分布数は1.7~5.2/mm2である。単独道管の 最大径は(0.22~)0.30~0.38mm、単せん孔、せん孔板は水平に近いかやや傾斜、接続道管間の有縁壁孔は交互配列、チロースは少ない。基礎組織をなす繊維(真正木繊維または繊維状仮道管)は長さ1.6(0.8~2.1)mm、径0.02~0.03mm、壁厚0.0025~0. 004mm。軸方向柔組織には短接線柔組織ないし散在柔細胞と周囲~翼状柔組織があり、細胞中にシリカを含むものが多い。放射組織は1~9細胞幅で多列のものの最大高さは(1.0~)1.3~2.0(~2.7)mmである。構成は異性で直立細胞ないし方形細胞からな る鞘状部が比較的よく発達し、大部分を占める平状細胞の内部に着色物質を多く含み、またシリカがよく見られる。
 材の重さ硬さは中庸ないしやや重硬で、気乾比重に0.56~0.81、0.61~0.89、0.63~0.85、0.72、0.74、0.75、0.80、0.94などの記載がある。生材からの気乾までの収縮率の1例に放射方向2%、接線方向4%がある。材の強さは中庸からやや大である。製材 および切削加工は容易であるが、シリカのために刃物を鈍化させる。乾燥はかなり容易であるが、ときに捩れ、湾曲の傾向がある。単板切削・接着・塗装・仕上げは良好、耐朽性はあまりないが防腐剤注入は容易である。
 量的に出材は多くないが、樹が比較的大きく加工が容易なため用途が広い。建築構造材および内装材、家具、器具、トラックボディ、パレットなどのほか、合板としても好適である。輸出材でときにdark red merantiに混ぜられることがある。
3.Heritiera javanica KOSTERMANS
 学名の異名(synonym)にTarrietia javanica BLUMEがあり、マレー名:mengkulang、mengkulang jari、インドネシア名:teraling、スラウェシ名:palapi、ヒリッピン名:lumbayanなど各地の名称がある。タイ、インドシナ、マレー、スマトラ、ボルネオ、ジャバ、スラウェシ、フィリピンに分布する。高さ42m、直径95cmまでになる大高木で、樹皮は灰 褐色、裂け目が入り鱗片状になって剥げる。葉は5~7個の小葉からなる掌状複葉で小葉は楕円形、長楕円形、倒卵状楕円形、長さ9~17cm、幅4.5~8cm。果実は楕円形で長さ2cmまで、翼は長さ10cm、幅5cmまでの大形である。
 心材は淡紅色、紅褐色、褐色などを示す。道管は単独、または放射方向に2~4個が接続、ときに小道管が介在する。接続道管群を1個とみて分布数、2~5/mm2。径は0.05~0.38mmである。繊維の径は0.02~0.03mm、壁厚は0.002~0.004mm。軸方向柔組織に は短接線柔組織ないし散在する柔細胞、周囲ないし翼状柔組織と帯状柔組織が見られる。短接線柔組織はやや多く、放射方向に1~4細胞層、接線方向に2~10細胞が連なり、ときに放射組織間を架橋する。短接線間に介在する繊維は放射方向に2~15細胞層 。周囲柔組織は0~3細胞層で多くは1層、翼状に発達するものは比較的少ない。帯状柔組織ほ放射方向に4~10細胞層で輪郭は不規則である。柔細胞の径はO.02~O.04mm、壁厚は0.001~0.002mmで中に濃色の物質を含むものが多い。放射組織は1~6細胞幅、4 ~70細胞高で、上下両端1~3層および周縁は不完全な鞘状部となる。細胞の内部に濃色の物質を含む。材の組織写.真のうち9~11(このwebでは未掲載)はteralingの名で輸入された材によるもので、多分Heritiera javanica KOSTERMANSと思われる。
 材の気乾比重の値には0.61~0.84、0.63~0.85、0.66、0.72、0.74などがある。
 スラウエシ北部に蓄積がやや多くあり、わが国に合板用材などとしてpalapiの名で輸入されたことがある。文献によってはpalapiをハイノキ科(Sapotaceae)のMadhucaに当てているものがあるが、その根拠についてはよくわからない。 平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る