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平井信二先生の樹木、木材研究

マンゴー属の樹木(その1)
1.マンゴー属の名称、分布と形態
 マンゴーMangiferaウルシAnacardiaceaeに属し35あるいは40ほどの種類があるとされている。インドから東方へ支那西南部・海南島まで、マレーシア全域(インドネシア全域、フィリピン、パブア・ニューギニア、ソロモン諸島までの範囲にわた って分布する。果樹として熱帯・亜熱帯地方に広く植栽されているマンゴーMangifera indica LINNAEUSの名称を、他の種類も含めたこの属の呼称にあてていることが多く、一般名または英名およびインドでmango、mangga、ビルマでthayet、タイでmamuang- pa、ベトナムでxoai、マレーでmachang、mempelam、サラワクでmachang、サバでasam、インドネシアでmembachang、フィリピンでpahutanなどという。
 ふつう常緑の中高木または大高木で板根は出ないかまたはあまり著しくない。樹皮は灰褐色、淡褐色、暗褐色などで浅い裂け目が出る。葉は互生する単葉でらせん状につきやや革質または革質、広卵形から長楕円形、皮針形などのものがあり、ふつう大 形で鋸歯はない。葉柄は太くしばしば基部で膨れるかまたは上面で平たくなる。大きい頂生の円錐花序を出して小花を多数つけるが雄花だけの株と雄花と両性花をつける株とがある。後者の場合も花序の大部分は雄花であって果実がなるのは少数の花だけ である。花はふつう黄白色ないし淡黄緑色であるが、紅色、紫色を帯びる種類もある。萼裂片と花弁はそれぞれ4~5個、雄ずいは1~5個で、1個のみが稔性で他は多少とも不稔であるがまた5個とも稔性となる場合もある。雌ずいは1個で子房は1室。果実は 大きな石果でふつう楕円形に近く多汁質、中に1個の大きくてしばしば扁平な核があり、その中を種子が充たしている。核の表面から通常無数の強い繊維質のものが出て果肉の中を通っている。  
2.マンゴー属の材の組織
 散孔材。辺心材の区別がおおむね不明瞭なものと、明らかな濃色の心材がありときにそれに黒色に近い暗色の縞を伴うものとがある。生長輪はおおよそ明瞭なものと不明瞭なものとがあり、木理はふつう通直、ときに波状またはやや交走、肌目はやや精 ないしやや粗、脆心材をもつものがある。材の顕微鏡的な構成要素は道管、真正木繊維または繊維状仮道管、軸方向柔組織と放射組織とである。道管は単独ときにおもに放射方向に2~3個が接続し、横断面で見て片側または両側が放射組織と接触し、分布 数は少なく、1~7/mm2、径は0.03~0.34mmである。単せん孔で接続道管の間の相互有縁壁孔の径は約0.008mm、しばしばチロースが見られる。繊維は材の基礎組織を形成し真正木繊維とされるがときに繊維状仮道管と記載されている。軸方向柔組織のうち道 管に随伴型のものはおおよそ翼状柔組織でときに連合翼状柔組織となる。そのほかにふつう層数の少ないターミナル柔組織が存在する。放射組織はほとんど単列、ときに部分的2列、全体的な2列、または3列となり、高さは低く2~25細胞高である。構成は 異性で上下両縁は直立細胞または方形細胞、中間は平伏細胞からなる。細胞内にしゅう(蓚)酸石炭の結晶と暗色の樹脂様物質を含んでいることが多い。  
3.マンゴー属の材の性質と利用
 この属の材の気乾比重の値に0.42~0.95の範囲のものが記載されているが、一般に材の性質がよく似ていて気乾比重0.50~0.75程度のものが多い。したがって強度的性質は中位あるいはやや以下の程度と思われる。製材および切削加工は容易、乾燥も良 好であるが伐採後速かに処理しないと変色を生ずるおそれが多い。耐朽性は屋内使用では普通であるが屋外および接地条件ではきわめて腐朽しやすい。また乾材白蟻の侵害が著しい。材の貯蔵中しばしば悪臭を生ずる。モルモットを使っての材接触による 皮膚炎発生の報告によるとある程度の発生が見られるので材取扱いのアレルギーも考えられる。数年前に実施された林野庁の未利用樹種利用開発推進事業の合板製造試験結果では総合して適性が高いと評価されている。
 天然生のものが量的にまとまって出材されるケースが少ないので工業的な利用性はあまり高くない。また熱帯では耐朽性に難点がある。一般に建築内部構造材・造作材、高級でない家具、器具、箱、包装、マッチなどの用途があり、茶箱などのための合 単板にも用いられ、濃色に黒色の縞がある材は装飾材になる。  
4.マンゴーの名称、分布と形態
 マンゴーMangifera indica LINNAEUSの一般名または英名をmango、mangga、Indian mango、common mangoといい、その他現地名にはインドでam、amriなど、ビルマでthayet、タイでmamuang-pa、ベトナムでxoai、カンボジアでmuom sway、svay prey、マレーでmempelam、pauhなどがある。中国・台湾名は檬果、様仔などで仏典には菴羅その他の字が当てられている。きわめて古い有史以前から栽植されて熱帯・亜熱帯の各地に広まっているので正確な原産地は不明であるがインド北部からインドシ ナヘかけてのモンスーン地帯と推測されている。
 高さ10~30mになる常緑高木で直径は70~150cmに達するものがある。大きな枝を分岐して樹冠は広がる傾向が多い。樹皮は灰褐色~褐色で浅い縦の裂け目が入る。葉は互生する狭い長楕円形または皮針形で、長さ10~30cm、幅5~9cm、鋭尖頭、基部は楔 形から広楔形、薄い革質で無毛、全縁であるが縁はやや波状を呈する。葉柄は長さ2.5~5cmである。頂生する長さ15~50cmの大きな円錐花序を出し小さい花を無数につける。花序軸に細毛があるかまたは無毛。花には完全花と雄花があり芳香があり径は約 5mm。萼裂片5個、花弁5個で長卵形、白色、黄白色、黄緑色などで基部に黄条がある。雄ずい5本のうち1個のみが稔性である。花序の基部につく5~8個ほどの少数の花のみが結実して下垂する。果実はほとんど円形、卵形のものから長楕円形まで、また腎 臓形、曲玉形などいろいろの形のものがあり長さ4~25cm、径1.5~10cm、重さ50g~1.4kg、果皮は平滑で緑色、黄色、燈黄色、帯紅色、帯紫色などに熟し果肉は淡黄色ないし橙黄色で多汁で甘味が多くふつうややテレピン臭があるが独特の風味をもつ。中 に1個の扁平な大きな核があってその表面に銀白色で硬い繊維質のものがつき果肉中に走っている。
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