v2.3

平井信二先生の樹木、木材研究

バチカ属の樹木(その2)
8.Vatica harmandiana PIERREの概要
 Vatica harmandiana PIERRESect.Sunapteaに属し、ビルマのテナセリウム、タイ半島部、マレー北部、インドシナに分布する。Vatica cinerea KING、Vatica lancaviensis RIDLEYはその異名である。タイでSadao-pak、sak don、sak hin、マレーでresak laut、pinang baik、ベトナムでlu tu、カンボジアでchramasという。
 ふうつ高さ12mまでの小~中高木であるが、ときに高さ20m以上、直径70cmまでになる。葉は楕円形から皮針形で長さ5.5~14cm、幅1.5~5cm、側脉は6~12対、ほぼ無毛である。葉柄の長さは0.5~1.5cm。花序は長さ10cmまでで花数は少ない。花弁は白色 。果実は球形に近く長さ0.7cmまで、がく裂片のうち2個は翅となって長くなり皮針形など、長さは約5cmである。他の3個は短くて長さ1.3cmほどである。これらは基部で合着してカップになり果実の基部とも合着する。  
9.vatica harmandiana PIERREの材の組織、性質と利用
 心材は黄褐色である。材の顕微鏡写.真があるので組織の要点をあげる。道管はほとんどが単独で散在し、分布数は18~25/mm2、径は0.09~0.15mm、せん孔板はやや傾斜し単せん孔である。この標本ではチロースが認められない。材の基礎組織をなす繊維 状仮道管の径は0.015~0.03mm、壁厚は0.005~0.008mmである。
 軸方向柔組織のうち周囲柔組織はその発達が不規則で、横断面で見てふつう道管の放射方向で帽状に存在し0~3細胞層、ときに6細胞層までのものがある。また接線方向に6細胞まで連なる帽状的翼状の形のものがある。短接線柔組織は極めて少なくかつ 短く、むしろこれの移行した単独の柔細胞が多い。垂直樹脂道を囲む柔組織は道管孔周辺のものよりもよく発達し翼状にのびるものもある。樹脂道孔の放射方向上下に1~4細胞層、ときに7細胞まで、翼状のものは樹脂道孔を外れて接線方向に7~8細胞まで のびる。柔細胞の径は0.03~0.04mm、壁厚は0.001~0.0015mmである。垂直樹脂道は単独で散在し、分布数4~8/mm2、径は0.05~0.13mmである。
 放射組織は単列(1部2列のものがある)、多列の2型にわかれる傾向があり、単列のものは3~12細胞高、多列のものは3~6細胞幅、12~100細胞高を示す。構成は異性で、大型細胞層(直立細胞、方形細胞または高さが大きい平伏細胞)と小型細胞層(高 さの小さい平伏細胞)とがかなり不規則に入りまじる。すなわち単列放射組織および多列放射組織の上下両端1~5層の単列部は大部分大型細胞層であるが、1部2列の小型細胞層が介在し、多列部の周縁ときに内部中間にも大型細胞層がある。他は小型平伏 細胞層である。柔細胞中に結晶が見られる。
 材は重硬で、気乾比重に0.89~1.16の記載がある。材は市場でresakとして扱われ、他の重硬なバチカ属のものと同様に家屋建築の構造材、器具材などに用いられる。  
10.Vatica dyeri KING
 Vatica dyeri KINGは、Sect.Sunapteaに属し、おもにインドシナに分布し稀にマレーに見られる。ベトナム、ラオスでlau tau、ベトナムでlau tau xanh、ラオスでchidhi-deng、カンボジアでchramas、xamaという。
 中~大高木で高さ40m、直径90cmまでになる。葉は楕円形などで長さ9~17.5cm、幅4~8cm、側脉は11~13対あって無毛、葉柄の長さ0.9~1.3cmである。花序の長さは4~7.5cmで、花弁は黄色を呈する。果実は円錐形で、がく裂片のうち長い2個は長さ3cm ほど、短い3個はその1/4長である。
 材は黄褐色で、気乾比重に0.95~1.04、材質は縦圧縮強さ615~660kg/cm2、曲げ強さ1,700~1,800kg/cm2の報告がある。重硬からきわめて重硬で、強度が大きい。構造材、船舶、橋梁などの土木材その他に用いられる。
 同じくインドシナの北部に産するVatica tonkinensis A.CHEVALIERは現地名tauといい、材の気乾比重に0.74、0.93の記載があり、0.74のもので縦圧縮強さ630kg/cm2、曲げ強さ1,050kg/cm2の報告がある。  
11.Vatica lanceaefolia BLUME
 Vatica lanceaefolia BLUMESect.Vaticaに属し、インドのアッサム、バングラディシュ、ビルマ北部に分布し、インドでmorhai、makrai、moal、バングラディシュでlasua garjan、ビルマでpanthityaという。
 大きい低木から高木で、樹皮は灰色、平滑である。葉は長楕円状皮針形などで長さ12.5~20cm、洋紙質、葉柄の長さは約1.25cmである。花弁は黄白色を呈し香りがある。果実は卵形で長さ約2.5cm、果時のがく裂片はほぼ同形で、果実より短く開出また は反曲し、果実と離生している。
 心材は灰褐色~紅褐色で、材の気乾比重に0.56~0.67が記載され、強度は気乾比重0.67のもので、縦圧縮強さ544kg/cm2、曲げ強さ980kg/cm2、曲げヤング係数14.4×10(4)・kg/cm2を示す。板材として建築、家具に用いられ、器具材その他の用途があり、 良い木炭が得られる。樹脂に強い香りがあり、インドでghundとして知られている。  
12.Vatica roxburghiana BLUME
 Vatica roxburghiana BLUMESect.Vaticaに属し、インド産で、vellei payin、cheru pineyという。
 中高木で、葉は楕円状皮針形、長さ10~22.5cm、葉柄の長さは3.8~5cmである。果実はほとんど球形を呈し径は3.8cmほど、がく裂片5個はほぼ同形で果実より短く、薄い革質である。
 心材は紅褐色で、材の気乾比重に0.94の記載があり、緻密・重硬である。  
13.Vatica paludosa KOSTERMANS
 Vatica paludosa KOSTERMANSは、Sect.Vaticaに属し、セイロンに固有でmendoraという。
 中高木で、高さ15m、直径50cmまでになる。樹皮は灰色で平滑。板根は著しくない。葉は楕円形~卵状楕円形で長さ12~30cm、幅5~15cm、側脉は7~18対あって、洋紙質からやや革質を示す。葉柄の長さは2.5~4.5cmある。花序の長さは8cmまでで少数の 分枝がある。果実はやや扁平な球形で径は5cmまで、がく裂片5個は同形で卵形など、鋭頭、長さ1~1.5om、厚質である。
 心材は紅褐色で、材の気乾比重に0.96の記載があり緻密である。 平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る