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平井信二先生の樹木、木材研究

ペカン属の樹木(その4)
16.モッカーナット・ヒッコリー
 モッカーナット・ヒッコリーCarya tomentosa NUTTALL(異名Carya alba K.KOCH、non NUTTALL ex ELLIOT、Hicoria alba BRITTON、Juglans tomentosa POIRET、Juglans alba LINNAEUS)はヒッコリーSect.Eucarya、すなわちヒッコリー類、true hickoryに属する。これも単にヒッコリーという場合がある。カナダではエリー湖周辺のみ、アメリカ中部・東部のやや乾性の森林に生ずる。英名はmockernut hickory、mockernut、bigbud hickory、white heart hickory、black hickoryなどと単にhickoryがあり、独名はSpottnuss、weisse Hicokry、filzige Hickory、仏名はcaryer blancである。わが国には明治中期に渡来した。
 高さ25~30m、ときに40m、直径90~120cmになる落葉中~大高木である。樹皮は暗灰色を呈し、緻密でや深い割れ目が入るが、プレート状に裂片化することはない。小枝にはふつう細軟毛がある。頂芽は大きく長さ1.5~2cmである。
 葉は互生する奇数羽状複葉で、小葉はふつう7または9個、倒皮針形などで長さ8~18cm、頂小葉は他より大きい。鋭尖頭、基部は楔形、下面は密に細軟毛を布き、また腺点がある。つぶすと芳香を発する。葉軸・葉柄にも細軟毛または粗毛がある。
 果実は球形から倒卵形、楕円形などで長さ3.5~5cm、4本の縦の凹線があり、遅くなって基部まで裂開する。核(ナット)は長さ1.5~3cmで、僅かに扁平、壁は厚く、仁は甘い。
 材は環孔材。辺・心材の区別は明瞭で、辺材は厚くほぼ白色、心材は暗褐色を呈する。年輪は明瞭である。木理はほぼ通直で、肌目はやや粗い。
 材の組織と材質はシャグバーク・ヒッコリーCarya ovata K.KOCHとほぼ同様で、利用でも同じくヒッコリーとして市場に出る。材質数値の例をあげると、気乾比重0.82、生材から全乾までの全収縮率は接線方向11.0%、放射方向7.7%、体積17.8%、縦圧縮強さ626kgf/cm2、曲げ強さ1,344kgf/cm2、曲げヤング係数 15.6×10(4)kgf/cm2、せん断強121kgf/cm2である。果実は食用となり、樹皮は黒色染料に用いられたことがある。 
シナヒッコリーの概要
 シナヒッコリーCarya cathayensis SARGENT(異名Hicoria cathayensis CHUN)はペカンSect.Pecania、すなわちペカンpecan hickoryに入れられていることが多いが、中国の学者は別にSect.Sinocaryaを設けて、これに入れている。その特徴は冬芽は裸芽で鱗片をもたず、複葉の小葉数が少ないことである。シナヒッコリーは支那東部(浙江・安徽省)に分布している。英名をChi nese hickory、Cathay hickory、中国名を山核桃、核桃、小核桃、山蟹、野漆樹という。
 高さ10~20m、直径30~60cmになる落葉高木である。樹皮はほぼ平滑で灰白色を呈する。小枝は橙黄色の鱗状腺体で被われる。葉は長さ16~30cmの奇数羽状複葉で、小葉は5~7個、皮針形~倒卵状皮針形、下部の側小葉は卵形など、長さ10~18cm、幅 2~5cm、鋭突頭、基部は楔形、成葉で下面脉上に宿存または脱落する細軟毛と、下面全面に後に疎らとなる橙黄色の鱗状腺体がある。
 果実は倒卵形で、幼時は4個の狭い翼状の縦稜がある。全面に橙黄色の鱗状腺体を被るが、後に疎らとなる。遅くなって4弁に裂開する。核(ナット)は倒卵形などで、長さ2~2.5cm、著しくない4個の縦稜がある。仁は甘く美味である。 
.シナヒッコリーの材の組織、性質と利用
 おもに『中国木材誌』によってその概要を記す。環孔材。辺・心材の区別は明瞭で、辺材は幅1.5cmまたは以上あり淡黄褐色または淡紅褐色、心材は暗紅褐色を呈する。生長輪は明瞭である。
 孔圏と思われる部分は道管孔が4列までで、晩材に入ると径は急に小となる。ほとんど単独で存在する。孔圏で接線方向の径は多くは0.20~0.25mm、晩材で分布数平均は19/mm2、接線方向の径は多くは0.05~0.08mmである。単せん孔をもち、チロースは きわめて少ない。
 材の基礎組織を形成する繊維は有縁壁孔が認められるので繊維状仮道管であり、その長さは1.2(0.9~1.7)mm、径は0.015~0.02mmである。
 軸方向柔組織は量が多く、1細胞層程度の周囲柔組織と、晩材部に存在する放射方向に通常2~3細胞層の帯状柔組織がある。中には菱形の結晶を含む多室結晶細胞がある。
 放射組織は1~4細胞幅で、単列のものが多く、1~48細胞高またはそれ以上である。構成は異性で、大部分は平伏細胞からなるが、上下両端部は方形細胞または直立細胞である。細胞内に樹脂様物質の含有が多く、また菱形の結晶を含むものがある。
 材の気乾比重は0.74、含水率1%当りの平均収縮率は接線方向0.32%、放射方向0.24%、縦圧縮強さ472kgf/cm2、曲げ強さ1,010kgf/cm2、曲げヤング係数10.5×10(4)kgf/cm2、衝撃曲げ吸収エネルギー0.80kgf・m/cm2である。
 乾燥は遅く狂い、干割れが出るおそれがある。切削加工は困難がなく仕上げ面は良好である。接着性は普通、塗装性は良好、釘打ちではときに割れが出るが保持力は大きい。心材の耐朽性は中位で、材はキクイムシの食害を受ける。
 材は工具の柄、はしごなどの器具、農機具、車両、運動具、その他の用途があり、薪炭材に用いて良質である。仁を食用とし、また搾油が行われる。核の外皮は活性炭に作られる。 
19.Carya hunanensis CHENG et R.H.CHANG ex R.H.CHANG et LU
 Carya hunanensis CHANG et R.H.CHANG ex R.H.CHANG et LUは、中国ではSect.Sinocaryaに入れられる。支那中部・西南部(湖南・貴州・広西省)産で、中国名は湖南山核桃という。
 高さは12~14m、直径60~70cmの落葉高木で、樹皮は灰白色から灰褐色を呈し、浅い縦の割れ目が入る。1年生枝は銹褐色の腺体を密布する。葉は互生する奇数羽状複葉で長さ20~30cm、小葉は5または7個あり長楕円形~長楕円状皮針形、長さ6~1 8cm、幅2~7cm、上部の小葉は大きい。鋭尖頭、基部は楔形、上面に毛を散生し、下面とくに中肋上に軟毛を密生し、また下面に橙黄色の腺体がある。葉軸・葉柄にも細軟毛を密布する。
 果実は倒卵形で頂端から中部まで4個の縦稜があり、偽果皮外面に黄色の腺体を密布する。核は倒卵形で長さ2~3.7cm、やや扁平で両端が尖がる。仁から搾油し食用とする。植栽されるものがある。 
20.Carya kweichowensis KUANG et A.M.LU ex CHANG et LU
 Carya kweichowensis KUANG et A.M.LU ex CHANG et LUは、中国ではSect.Sinocaryaに入れられる。支那・貴州省産で、中国名は貴州山核桃という。
 高さ20m、直径60~70cmまでになる落葉高木で、樹皮は灰白色から暗褐色を呈し浅い継の割れ目が入る。小枝は灰黒色で初め楯状着生の橙黄色腺体がある。冬芽は黒褐色を呈する。
 葉は互生する奇数羽状複葉で長さ11~20cm、小葉は5個で長楕円形など、長さ6~14cm、幅2~5cm、上部の3小葉は下部のものより大きい。鋭尖頭から短尖端の鋭頭を呈し、基部は楔形~円形、下面脉腋に細軟毛、両面に疎に腺体を散生するが、後次第に 脱落する。
 果実は扁球形などで長さ2~2.5cm、腺体を疎生する。核は扁球形、淡黄白色で、頂端は凹陥し、2個の凹んだ線溝がある。 
21.Carya tonkinensis LE COMTE
 Carya tonkinensis LE COMTEは中国ではSect.Sinocaryaに入れられる。支那西南部(広西・雲南省)とインドシナ北部に生じ、中国名は越南山核桃、安南山核桃、老鼠核桃である。
 高さ10~15mになる落葉高木である。小枝は褐色~灰褐色で、初め細軟毛と楯状に着生する橙黄色の腺体を布くが、後に無毛で腺体は疎らとなる。
 互生する奇数羽状複葉は長さ15~25cmで、小葉は5または7個、皮針形、倒卵状皮針形などで長さ7~15cm、幅2~5cm、長い鋭尖頭、基部は楔形~円形、下面に橙黄色の腺体と中肋・側脉に沿って褐色の細軟毛がある。
 果実は球形に近く長さ2.2~2.4cm、偽果皮(殻)に短毛と橙黄色腺体があり、4弁に裂開する。核は先端近くでやや扁平となり淡灰黄褐色を呈する。仁を圧搾して油が得られる。 平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る