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平井信二先生の樹木、木材研究

モクセイ類
1.モクセイ類の分類
 モクセイ類は従来花色によって、白色のギンモクセイ、黄白色のウスギモクセイ、橙黄色のキンモクセイにわけ、支那原産とわが国に自生のものとの関係を加えて、これらを別種、変種、品種の学名であらわすいくつかの考えがあったが、ここでは山崎 敬氏の提示した次の分類体系によることとする。
 (1)ギンモクセイ(シキザキモクセイ)  Osmanthus fragrans LOUREIRO var. fragrans:支那中部・南部、ベトナム原産で、葉はやや小さく幅が広い。雄株と雌株がありよく結実する。わが国で植栽されるギンモクセイというものの多くはこれである。中国名は木犀、桂花で、花色により銀桂、金桂、丹桂の名がある。学名ではOsma nthus fragrans LOUREIRO var. latifolius MAKINO、Osmanthus asiaticus NAKAIがその異名となる。
 (2)キンモクセイOsmanthus fragrans LOUREIRO var.aurantiacus MAKINO forma aurantiacus:わが国の栽培品のみで、葉はギンモクセイより大きく幅が狭い点が異なっている。雄株のみで結実するものはない。多分ウスギモクセイから花色の濃いものが雄株で選別され、それから挿木によって増殖されたものと考えられている。それ 故にこれに中国名の丹桂、ときに金桂をあてるのは適当でない。学名はOsmanthus aurantiacus NAKAI、Osmanthus fragrans LOUREIRO forma aurantiacus P.S.GREENがその異名となる。
 (3)ウスギモクセイOsmanthus fragrans LOUREIRO var.aurantiacus MAKINO forma thunbergii YAMAZAKI:わが国の九州南部に自生しており、ときに植栽される。葉はキンモクセイと同様で、結実する。これに中国名の金桂をあてるのは適当でない。Osmanthus fragrans LOUREIRO var. thunbergii MAKINO、Osmanthus intermedius NAKAI、Osmanthus aurantiacus NAKAI var.cremeus NAKAIはその異名である。
 (4)シロモクセイOsmanthus fragrans LOUREIRO var.aurantiacus MAKINO forma leucanthus YAMAZAKI:わが国で植栽される。葉はキンモクセイと同様で、花は白色、結実する。わが国でギンモクセイとされているもののあるものはこれと思われるが、中国名の銀桂をこれにあてるのは適当でない。  
2.ウスギモクセイ、キンモクセイとシロモクセイ
 

ウスギクモクセイOsmanthus fragrans LOUREIRO var.aurantiacus MAKINO forma thunbergii   YAMAZAKIは九州南部(熊本・鹿児島県)に自生しときに植栽される。常緑の小高木で高さ4~10mとなる。小枝は灰色を呈し無毛である。葉は対生し、長楕円形から狭い長楕円形、長さ7~18cm、幅2~4cm、ときに6.5cmまで、鋭尖頭、基部は鋭形から鈍   形、全縁または無数の芒尖鋸歯がある。革質で無毛、両面に小腺点を布く。側脉は9~11対ある。葉柄は長さ0.7~2cmで無毛である。
  9~10月に開花し、雌雄異株、8~9花を葉腋に束出する。包は円状卵形で鋭頭、長さ約2mm、花梗の長さは5~10mmである。がくは皿形で長さ約1mm、無毛で4裂する。花冠は黄白色で4裂し、筒部の長さは約1mm、裂片は倒卵形で円頭、雄花では長さが約3mm   、雌花ではいくらか短い。雄花には雄ずい2個と退化雌ずい1個があり、雄ずいの長さは約1.5mm、花系の長さは約0.5mmで花冠筒部の中位につく。葯隔は僅かに小さい短凸頭をなす。雌花には小さい退化雄ずい2個と雌ずい1個をもち、子房は卵形、無毛、花   柱の長さは約0.5mm、柱頭は2裂する。石果は長楕円形で長さ1.5~2cm、青黒色に熟する。
  キンモクセイOsmanthus fragrans LOUREIRO var.aurantiacus MAKINO forma aurantiacusは単にモクセイということもある。よく植栽されており、雄株のみで結実しない。花は橙黄色で強い芳香をもち、秋の風物詩となっている。大気汚染に弱く、都会地では開花が少なくなることがよく問題となっている。
  寿命が長く、各地に天然記念物または名木として知られているものがある。例をあげると、宮崎県束臼杵郡北浦村ものもは高さ18m、日通り周囲1.5m、愛媛県西条市往至森寺のものは高さ16m、根元周囲3m、静岡県三島神社のものは高さ20m、根元周囲4m、   樹令200年という。これらのうちには前項のウスギモクセイである場合があるかも知れない。
  キンモクセイは文芸や工芸でもよく扱われている。
  歩みきてふとしも匂へ山の手の日の照る坂の木   犀の花  太田水穂  

 

  夜霧とも木犀の香の行方とも  汀女

 

シロモクセイOsmanthus fragrans LOUREIRO var.aurantiacus MAKINO forma leucantha YAMAZAKIは花が白色のもので、最近ギンモクセイとは別のものとして取りあげられた。それ故従来ギンモクセイといっていたものの一部はこのものと思われる。植栽品で結実する。

3.ギンモクセイの概要
 ギンモクセイOsmanthus fragrans LOUREIRO var.fragransは支那中部、南部、ベトナム産で、また植栽もされる。中国名は木犀、桂花、巌桂で、わが国でも単にモクセイという場合はこれにあてることが多い。モクセイの名は樹肌が犀に似ることによるとされている。英名にはfragrant olive、sweet olive、tea olive、sweet osmanthus、fragrant flowerがある。
 常緑の低木~小高木で、高さ3~5m、ときに18mまでのものがある。樹皮は灰褐色、小枝は黄褐色などで無毛である。葉は対生し、楕円形、長楕円形または楕円状皮針形で長さ7~15cm、幅2.5~5cm、やや急鋭尖頭、基部は楔形~広楔形、全縁または通 常上半分に細鋸歯がある。革質、無毛で両面に腺点をもつ。側脉は6~8ときに10対まである。葉柄の長さは0.8~1.5cmで無毛である。
 雌雄異株で、花は葉腋に数個が束生し、包は広卵形、花梗の長さは4~10mmである。がくの長さは約1mmで不斉に4裂する。花冠は白色、黄白色、淡黄色または橙黄色で、長さ3~4mm、キンモクセイより香が少ない。雄花に雄ずい2個、退化雌ずい1個をも ち、雌花に退化雄ずい2個、雌ずい1個をもつ。果実は楕円形で長さ1~1.5cm、熟して紫黒色を呈する。花色により銀桂、金桂、丹桂などの名があるが、同株上で異色のもの、また時期により異色のこともある。  
4.ギンモクセイの材の組織、性質と材その他の利用
ギンモクセイの材はヒイラギと同様の紋様孔材である。辺・心材の区別がなく、灰白色から淡灰褐色を呈する。年輪はほぼ明瞭または不明瞭である。木理はふつう通直でときに斜行し、肌目は精である。
 道管の断面形は多角形で、径は0.03~0.06mm、多数が道管状仮道管、柔組織を伴って、放射方向に長くまた分岐して火?状あるいは樹枝状を呈する。道管の分布数は120~200/m㎡である。せん孔板は傾斜し、単せん孔をもつ。内壁にらせん肥厚が明瞭で ある。チロースは見られない。道管状仮道管は道管群の中または周辺に存在する。
 材の基礎組織を形成するのは真正木繊維で、長さ1.0~1.85mm、径0.01~0.015mm、壁厚0.002~0.004㎜である。ときに隔壁木繊維がある。軸方向柔組織では、周囲柔組織が道管群の中と周囲にあり、ときに接線方向に延びてやや帯状の傾向を示すものが ある。ターミナル柔組織は放射方向に2~6細胞層である。柔細胞の径は0.02~0.03mm、壁厚は0.001~0.002㎜である。
 放射組織は1~3細胞幅で、単列のものは少ない。2細胞幅のものが多く、高さは2~30細胞高でそのうち5~15細胞高のものが多い。その構成は異性で、単列のものおよび多列のものの上下両端、ときに5層までの単列部分は直立細胞、方形細胞または放射 方向の長さが短く軸方向の高さが大きい大形の平状細胞、他の多列部は小形の平状細胞からなっている。結晶は見られない。
 材質数値に次のものが報告されている。気乾比重0.97、含水率1%当りの平均収縮率は接線方向0.42%、放射方向0.27%、体積0.72%、縦縮強さ635kg/c㎡。
 乾燥は遅く、切削加工は比較的困難であるが、仕上げ面は良好で光沢が出る。接着、塗装にあまり問題はなく、釘の保持力は大きい。耐朽性は高い。
 樹が小さく、また材が量的にまとまることがないので大きい用途はない。家具の一部、器具・工具の柄、工芸品、彫刻、玩具などに用いられることがある。
 花は桂花茶などの食品の賦香料に用いられ、また薬品となる。樹は花木として広く植栽される。