v2.8

平井信二先生の樹木、木材研究

ホワイトラワン属の樹木
1.ホワイトラワン属
 ホワイトラワンPentacmeフタバガキDipterocarpaceaeに属し、ビルマ、タイ、インドシナ、マレー半島西北部のアジア大陸東南部とフィリピンに1種ずつがあり、中間があって隔離した特異な分布をしている。英名はwhite lauanである。フタバガキ科の大きいグループであるサラノキShoreaにきわめて近縁で、葉・果実は同様であるが、雄ずいの形態が特異なことから別属とされている。それ故サラノキ属に含め、その中の区分の一つの節を代表させるという考えも強いが 、ここでは従来の多くの扱いに従って別属のものとしておく。
 常緑または落葉高木で、板根が出る。葉は互生する単葉で全縁、有柄である。托葉を持つが早落性である。雌雄同株で、腋生または頂生の円錐花序または総状花序をつける。花にはがく裂片が5個、花弁が5個あり、雄ずい15個で、花糸は短く広く、葯室 は4個あって線状皮針形などを呈し、各葯室の先端が糸状に延長することが特異である。葯隔に針状でやや曲がった付属体がつき、これら併せて5個の長い突起物が1個の雄ずいにつく。雌ずいは1個、子房上位、3室で2個づつのに胚珠を含み、その上部は足体(stylopodium)に次第に狭くなり、花柱は糸状で、柱頭は不明瞭に3裂する。果実は堅果で、宿存するがく裂片のうち外側の3個が大きく発達した翅となり、内側の2個が小さい翅となる。これらの基部は果実を包むが、それとは離生している。
 アジア大陸産のものとフィリピン産のものとは材質が著しく異なるので、材の組織、性質および利用についてはそれぞれの種の項で記載する。  
2.Pentacme siamensis KURZの概要
 Pentacme siamensis KURZ(異名Pentacme suavis A.DE CANDOLLE、Pentacme malayana KING、Pentacme tomentosa CRAIB、Shorea siamensis MIQUEL)はビルマ、タイ、インドシナ、マレー半島西北部に生ずる。英名をBurma sal、ビルマでingyin、engyin、タイでrang、rang khao、pau、lak pao、ベトナムでca chac xanth、cam lien、カンボジアでreang、reang phnum、phchok reang、ラオスでhang、ph'au、マレーでtemak batu、meranti temakという。
 高さ20~25m、直径80cmまでの落葉高木で、ビルマ、タイでは樹幹が通直であるが、マレーで樹は小さく樹幹が曲がる。板根が出る。樹皮は暗灰褐色などで深い割れ目が入る。小枝はやや細く成時は無毛となる。葉は卵状楕円形などで長さ9~15cm、幅6 ~13cm、鋭尖頭、基部は浅心形から円形を示す。厚い洋紙質で、全縁、側脉は16対ほどあり、成時無毛である。葉柄の長さは2.5cmほど、托葉は長さ1.8cmまでで早落性である。
 円錐花序は腋生し、長さ15cmほどで疎らに開出し、径1.8cmほどの黄白色の花をつける。がく裂片5個は卵形で鋭尖頭、細綿毛を布き、花弁5個は広楕円形で一部細軟毛がある。雄ずいは15個あって無毛、花糸は短く、葯室4個は線形でそれらの先端は糸状 の突起となり、葯隔につく付属体は針状でやや短く太くて曲がっている。雌ずいは1個で、子房は卵形で無毛、足体を経て糸状の花柱へ次第に細くなり、柱頭は微小である。果実は卵形で先瑞は嘴状となり、長さは約2.5cmある。宿存して大きくなった木質 のがく裂片のうち、外側の3個は倒皮針形の翅で長さ12cm、幅3cmまで、約10脉があり、内側の2個は線形などで狭く長さ5cmまたは以下で、5脉ほどがある。  
3.Pentacme siamensis KURZの材の組織
 散孔材。辺・心材の区別は明瞭で、辺材は灰白色、淡灰褐色など、幅は約2cmまでである。心材は黄褐色、やや紅色を帯びた褐色、暗褐色などを呈する。生長輪は通常明らかでない。木理は交走し、ときに波状となり、肌目はやや精ないしやや粗で均質 である。よく注意すればリップルマークが認められることがある。
 道管は単独および放射方向に2~3個が接続し、分布教は3~6/mm2である。単独道管の断面形は円形、楕円形、扁円形などで、道管の径は0.12~0.26mmである。せん孔板は水平ないし僅かに傾斜し、単せん孔をもつ。接続道管の間の有縁壁孔は交互配列を し、径は0.008mmほどでベスチャード壁孔である。道管と放射組織との間の壁孔はやや大きく、長楕円形その他の形を呈する。心材の道管内にチロースが多く現れる。道管状仮道管が道管の周辺に不規則にきわめて少数現れるものがあり、形状と大きさも 不規則である。
 材の基礎組織を形成する繊維(真正木繊維と思われる)の径は0.01~O.02mm、壁厚は0.005~O.008mmである。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織は1~2細胞層で、不規則な翼状柔組織に発達しているものがかなり多い。この場合接線方向に7細胞まで伸び、放射方向には9細胞層までのものがある。単独で散在する柔細胞がかなり多く、標本によっては接線方向に2 ~3細胞が連なり放射方向におもに1細胞層の短接線柔組織に移行する形のものが現れ、さらに翼状柔組織の翼部分が延長した形態の放射方向に2~3細胞層の帯状柔組織に近いものがまれに見られる。垂直細胞間道がある処では、これらを包含して放射方向 に5~11細胞層の帯状柔組織が発達している。柔細胞の径は0.01~0.04mm、壁厚は0.001~0.002mmである。細胞内に樹脂様物質を含むものがあり、またやや大きいしゅう酸石灰の結晶を含むものも現れる。この場合、隔壁で仕切られたその各室に結晶を含む もの、1細胞が樽状にふくらんで結晶1個ずつを含むものなどがある。
 放射組織は1~5、まれに6細胞幅で、2~45細胞高である。多列のものの上下両端の単列部は1~5細胞層である。その構成は一般に異性で、単列部と多列部の周縁の一部は直立細胞または放射方向が短く軸方向が高い大型の平伏細胞の層、他は通常の丈が 低い小型の平伏細胞の層である。また小型の平伏細胞のみからなるほとんど同性のものがある。細胞内には樹脂様物質を含み、またしゅう酸石灰の結晶を含むものもある。
 垂直細胞間道は接線方向に並列する同心円状に配列して現れ、帯状柔組織中に包含されている。円形、扁円形などで、径は0.10~0.15mm、分布数は1~3/mm2などである。エピセリウムの壁は薄い。  
4.Pentacme siamensis KURZの材の性質と利用
 材の気乾比重に0.70~1.15の範囲の記載があるが、0.85~1.00程度のものが多く重硬である。材質数値の例をあげる。生材から全乾までの全収縮率は、接線方向8.9%、放射方向4.8%、縦圧縮強さ613kg/cm2、縦圧縮ヤング係数20.4×10(4)・kg/cm2、横 圧縮比例限度74kg/cm2、横引張強さ49~68kg/cm2、曲げ強さ1,125kg/cm2、曲げヤング係数15.9×10(4)・kg/cm2、せん断強さ123~128kg/cm2、ヤンカ硬さは横断面684kg、縦断面738~770kg。
 製材と切削加工は生材ではそれほど困難でないが、乾燥材では困難になる。乾燥は遅いが、割れなどの欠点が出ることは比較的少ない。心材の耐材性はきわめて高く、白蟻に対する抵抗性が大きい。防腐剤の注入処理はきわめて困難である。
 心材は重硬で耐朽性が大きいので、サラノキ属樹木(Shorea spp.)のうちマレーでいうセランガン・バトウselangan batuまたはバラウbalauのグループにおおよそ対応する。従って建築を含む重構造材、家具、器具、農機具、車両、船舶、枕木、電柱、杭、橋梁などの土木材その他に広く用いられる。
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