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平井信二先生の樹木、木材研究

セイロンテツボク属の樹木(
10.セイロンテツボクの名称と分布
 セイロンテツボク(テツザイノキ、インドテツボクMesua ferrea LINNAEUS(異名Mesua coromandeliana WIGHT、Mesua pedunculata WIGHT、Mesua roxburghii WIGHT、Mesua speciosa CHOISY、Mesua sclerophylla THWAITES、Mesua thwaitesii PLANCHON et TRIANA、Mesua pulchella PLANCHON et TRIANA、Mesua nagassarium KOSTERMANS)はインド、スリランカ、バングラデシュ、ビルマ、タイ、支那南部、インドシナ、マレー半島、シンガポールに分布し、また熱帯アジア各地で植栽されているものもある。和名にタガヤサン(鉄刀木)をあてているものがあるが、タガヤサン はマメ科LeguminosaeのCassia siamea LAMARCKに限った方がよい。
 次のように各地に多くの名称がある。英名はCeylon ironwood、East Indian ironwood、ironwood、ironwood tree、Indian resewood、独名はNagasbaum、インドでnageswar、nahor、naga、nangal、mesua、kesari、peri、スリランカでna、diya‐na、ビルマでgangaw、ngaw、中国で鉄力木、鉄栗木、鉄リョウ、埋波朗、喃木波朗、莫拉、石塩、ベトナムでvap、カンボジアでbosn eak、ラオスでkathang、may lek、タイでbunnak、saaraphi-doi、マレーでpenaga、penaga lilin、lenggapus、matopus、サラワクでpenaga、インドネシアでnagasari、nagasari gedeという。  
11.セイロンテツボクの形態
 高さ30m、直径65cm、枝下20mまでになる高木で、樹幹はおおよそ通直であり、基部に溝があるかまたは小さい板根が出る。樹皮は灰色から暗褐色で紫色を帯び、不規則に割れ目が出て、長いひっかかった裂片となる。内樹皮から白色ないし薄黄色の透明 で稀薄な液滴を分泌する。葉は長楕円形で長さ6.5~12.5cm、幅1~4cm、鋭尖頭または急尖頭、基部は楔形を呈する。革質で、下面は灰白色を示すことが著しい。葉柄の長さは0.4~0.8cmである。若い葉は明るい淡黄紅色から橙紅色を呈し、房になってしな やかに垂れ下がる。
 花は腋生で単出し、花梗は長さ3mmで短い。白色で芳香があり、径が9cmまであって大きく、雄ずいの葯が黄色なのと相まってサザンカの花のように装飾的である。がく片4個は円形で径は2mmある。花弁4個は瓦重ね状につく。雄ずいは多数、雌ずいは1個 で柱頭は楯形である。果実は楕円形で長さ約3cm、短い嘴状部がある。木質で表面は粗く、しばしば樹脂滴がかたまっている。宿存する肥大したがく片の上にのっていて、2弁に裂開する。種子は1~4個で、扁平、光沢ある褐色を呈し、種子の間に鮮かな色 の内隔壁がある。  
12.セイロンテツボクの材の組織
 散孔材で、道管が数個ずつグループをなしておもに放射方向の線にややジグザグになって配列する。辺・心材の境界はきわめて明瞭で、辺材は淡黄白色に少し淡紅色を帯び、さらされて灰色から灰褐色となる。心材は初めやや紫色を帯びた紅褐色で、や がて暗紅褐色となる。生長輪は不明瞭または認められない。木理はふつう交走し、肌目はやや精で均質である。材に特別な匂いや味はない。
 道管はほとんど単独であるが、きわめて稀に放射方向や斜方向に2~3個が接続する。分布数は4~8/mm2である。断面形は広楕円形などで、径は0.04~0.34mm、大径のものの間に少数の小径のものが混在する。せん孔板は水平ないしやや傾斜し、単せん孔 をもつ。接続道管の間または周囲仮道管との間の有縁壁孔はきわめて少い。ときにかすかならせん肥厚があるとの記載がある。チロースが多く見られ、また黄白色の沈積物がある。道管群の間を埋めて仮道管がある。これらはおおむね繊維状仮道管である が、道管と直接接続するものは道管状仮道管の様態を示す。
 材の基礎組織を形成しているのは有縁壁孔をもつ繊維状仮道管ないし単壁孔をもつ真正木繊維で、長さは0.65~1.60mm、径は0.01~0.025mm、壁厚は0.004~0.006mmで厚い。
 軸方向柔組織では、帯状柔組織が顕著で、放射方向に2~4、ときに5細胞層あり、ふつう接続方向にかなり長く連なるが、ときに途切れ、また不規則な波状をなす。比較的規則的に放射方向に0.3~0.6mmの間隔で出現する。柔細胞の径は0.015~0.03mm、 壁厚は0.001~0.002mmで、着色均質で多く含んでいる。ときに多室結晶細胞が現れる。
 放射組織はほとんど1細胞幅、まれに部分的2細胞幅で、2~35細胞高である。その構成は異性で、軸方向両端の1~2層および中間の一部の層は直立細胞ときに方形細胞からなり、他は平伏細胞から構成されている。細胞内に着色物質を多く匂み、結晶は 見られない。材中にシリカの含有はない。まれに水平細胞間道が現れるとの記載がある。  
13.セイロンテツボクの材の性質と材その他の利用
 材の気乾比重に0.91~1.28の範囲の記載があり、世界中できわめて重硬なものの一つである。材質数値の例をあげる。生材から気乾までの収縮率は接線方向5.5%、放射方向4.3%、縦圧縮強さ805~941kg/cm2、横圧縮強さ162~172kg/cm2、曲げ強さ1,56 7~1,731kg/cm2、曲げヤング係数19.5~19.7×10(4)kg/cm2、せん断強さ233kg/cm2、ヤンカ硬さは縦断面1,504~1,572kgである。
 材の化学的組成の例では、セルロース49.5%、ペントザン16.5%、リグニン22%、冷水抽出物3.0%、アルコール抽出物2.0%、1%NaOH抽出物10.7%、灰分0.3%を示す。
 乾燥はきわめて遅く、表面割れ、木口割れや狂いが出やすい。製材と加削加工はやや困難ないし困難であるが、鉋削の仕上げ面は平滑である。穿孔は容易である。釘打ちはきわめて困難で保持も不良である。心材の耐朽性は大きいが、白蟻に対する抵抗 性は高くない。心材の防腐剤注入はきわめて困難である。
 材はきわめて重硬で、それに相応して強度が大であり、耐朽性が高いので、これらの性質が必要な多くの用途に用いられる。重構造を含む一般構造材、建築では柱・梁・土台などのほか造作材として重荷重のフローリング・ドアー・窓などの枠・階段そ の他、家具、キャビネット、道具の柄などの器具材、農機具、機械部材、車両、船具を含む船舶材、枕木・鋪木・柵柱・橋梁・水工用などの土木材、重量物用パレット、楽器、銃床、彫刻、ステッキその他に用いられ、現地民は米つき用の杵に多く使用す る。また燃材にも用いられる。なお小さく細く削ったものを歯木に用いる。
 種子から得られる黄色の油は有毒であるが、灯用、工業用のほか、リューマチの薬用とされる。生花は装飾に使われ、インドで仏教、ヒンズー教の献花とする。また枕やクッションのつめ物とし、インドで新婚のときに使うという。花からは香水も作ら れる。薬用では収斂、健胃、去痰などの内服薬と、痔や炎症のはり薬にもする。未熟果や樹皮も発汗剤とし、葉は蛇やサソリの咬傷の外用薬とする。
 樹は樹冠が円錐形で形が良く、光沢のある緑葉、芽出しの黄紅色で房になって垂れ下がる若葉、大きな美しい花は装飾樹として賞用され庭園樹、行道樹に植栽され、インドではとくに寺院によく植えられている。  
14.Mesua philippinensis KOSTERMANS
 Mesua philippinensis KOSTERMANS(異名Kayea philippinensis PLANCHON ex TRIANA et PLANCHON)はフィリピン産で、現地名をyango、bitanholという。
 直径40cmまでになる高木である。樹幹は通直であるが短い。
 辺・心材の境界は不明瞭で、心材は淡紅褐色を呈する。生長輪は不明瞭。木理は通直、肌目は精である。
 道管は単独で、一様に散在し、分布数は30~35/mm2、断面形は卵形などで、径は0.03~0.10mmである。せん孔板は傾斜し、単せん孔をもつ。ときにチロースがある。道管のまわりには少量の周囲仮道管がある。材の基礎組織を形成するのは繊維状仮道管 または真正木繊維である。軸方向柔組織では、帯状柔組織が明瞭で、放射方向に数細胞層、接線方向に長く連続するがときに切断し、その放射方向の出現間隔はやや広く、また不規則である。細胞内に紅色の物質を含有する。放射組織は1、まれに2細胞幅 で、高さは低く最大1mmまでである。その構成は異性で、細胞内に紅色の物質を含んでいる。
 比重を含めた材質はMesua paniculata KOSTERMANSに類似している。心材の耐朽性は屋内使用では良いが、露出条件では耐朽性がない。
 材の利用もMesua paniculata KOSTERMANSと同様で、建築内装材、家具、キャビネットその他に用いられるが、供給量は少い。  
15.Mesua macrophylla KOSTERMANS
 Mesua macrophylla KOSTERMANS(異名Kayea macrophylla KANEHIRA et HATUSIMA)はインドネシアの西イリアン産である。高木で、葉と果実はこの属の中で最大の方に入る。高さは20mになる。葉は長楕円状皮針形で長さ35~55cm、幅11~15.3cm、鋭尖頭、基部は円状楔形を示す。葉柄の長さは2cmである。
 総状花序を腋生して単出し、長さ26cmまでで5~7花をつける。花序柄の長さは8~12mm、花梗の長さは2~3mmである。果実はほぼ球形で径は約6cm、宿存のがく片は革質~肉質で円形、長さ約5mmである。種子を2個含み、半球形で長さ約3cmである。
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