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木の生かし方、木の使い方を考える

木はそれぞれ役割と特徴を持っている

人類の誕生を準備した植物の進化


一口に木と言っても、木にはいろいろの種類が あります。
日本の木と外国の木、針葉樹と広葉樹 に始まり実に様々です。
その様々な木がそれぞれ 何らかの役割を持っていると考えられます。
 建築用材として考えても、構造材として使った ら良い木、内装に向いている木、造作材として使 える木、外構に適した木、塗装して映える木など と分かれ、色も白系、ピンク系から黒いものまで 多種多様です。
 そのほかにもお茶や薬、漆やゴムなどに使われ る木、根や樹皮や葉が生かされる木など、人間が 暮らしていく上で、木は計り知れない役割を果た してくれています。
 木の最も大きな役割は、光合成による酸素の排 出と炭酸ガスの吸収にあります。
木以外の植物も 同様の働きをして地球の上空にオゾン層を作って 紫外線などの有害光線を遮切り、動植物の生存を 可能にしてくれています。
 また、成長した木の陰で小さな植物や動物が生 き、微生物が繁殖し、葉の養分と微生物で豊かな 土壌が作られます。
 山があり、木があることで水の自然な循環がつ くられ、生態系が維持されています。
 こうして見ると、木という植物は漠然と存在し ているというのではなく、地球上に生き物が生存 できる条件をつくるために存在し、様々な生き物 の誕生を経て、究極の生きものとしてのヒト科の ヒト・人類の誕生へと導いてきたことが窺い知れ ます。
人類が地球上に出現したのは500万年から 550万年昔とされています。
地球の海中に生命 体が生まれたのが35億年ほど前で、陸上に進出 してきたのが6億年から4億年前と言います。
水中生物の光合成で地球上に酸素が増え、オゾン 層が地上20~30㎞上空に作られたからです。
 そして、植物の中でも分類学上比較的遅れて 姿を現したのが樹木です。
植物の系態として最も 発達した組織と機能をもつ高等植物とされるのが、 根から吸収した水分や養分を運ぶ通路であるとと もに、樹幹などを支える構造的な役目を果たして いる維管束(いかんそく)を備えた茎植物=維管 束植物です。
 維管束植物は大別するとシダ植物、裸子植物、 被子植物に分けられ、最初に現れたのが真正シダ 類、トクサ類、マツバラン類、ヒカゲノカズラ類、 イワヒバ類などのシダ植物です。
シノブ、ヒトツ バ、イワオモダカなどの観葉植物やワラビ、ゼン マイなどの食用植物が知られていますが、体長1 ~2㎝から10mの本木シダ類まで多様で、古世 代の石炭期(3億5千万年~2億8千万年前)の 最盛期には20~30mまで達するものがあった と言います。
 コケ類の後に隠花植物のうちで進化して出現し たのがこのシダ植物です。
これに次いで出現した のが裸子植物です。

●人間の生存を支える植物・樹木  
裸子植物というのは、後で種子になる胚珠を裸 出していることからつけられた名称で、進化のす すんでいない古い形質を持った植物で針葉樹がこ れに当たります。
 裸子植物はソテツ類(ソテツ)、イチョウ類 (イチョウ)、針葉樹(マツ、スギ、ヒノキなど)、 マオウ類(マオウ)に大別されます。
針葉樹の祖 先が地球上に出現したのは約3億年前の石炭期と され、発達しながら現在の針葉樹の世界をつくり あげてきました。
 針葉樹と呼ぶのは、樹木の葉の形態で分類した 呼称で、主に細く尖った葉を指し、広葉樹と対比 したものですが、常緑針葉樹と落葉針葉樹に大別 されています。
 植物の進化がすすみ、針葉樹よりはるかに遅く、 1億5千万年から1億年前に誕生したのが広葉樹 を主とする被子植物です。
 被子植物は、裸子植物に対応する語で、胚珠 (種子)が子房(果実)の中にとじ込められてい る植物であり、その多くは食用とされ、人間や動 物類の存在の大きな糧となる役割を持つものです。
 被子植物は、双子葉類と単子葉類の二つに大別 されます。
双子葉類の主をなすものが木本性植物 の広葉樹で、ウメ、カバノキ、ニレ、ブナ、クス ノキ、ケヤキ、クルミ、ツバキ等々があり、常緑 広葉樹(照葉樹)と落葉広葉樹とに分けられ、闊 葉樹とも呼ばれています。
落葉広葉樹ではブナ科、 カバノキ科、ニレ科などが知られています。
 広葉樹は、樹木の葉の形が広くて大きなことか らつけられた呼称で、樹木によってその形は異な りますが、概ね卵形、だ円形のものが多く見られ ます。
 なお、単子葉植物には、木本性のタケ、ヤシと イネ、ユリ、アヤメなどが属しています。
 このように見てくると、シダ類、裸子植物、被 子植物が、それぞれの段階で出現し、地球環境を 整えながら、次代の生物の誕生を準備してきたこ とがわかります。
 ここでは、超微生物に始まる生物の誕生の全て を語ることはできませんが、それぞれの生物種の 出現には偶然性や突然変異性ではなく、理にかな った必然性と意味があることが読みとれ、大自然 の不思議さと偉大さを感じさせるものがあります。
 そして、広葉樹が出現してから1億年以上の歴 史の中で、動植物の今日的な生存条件が整えられ、 地球上の究極の生物として、最も進化した脳と身 体を持った人間が、その体内に35億年の地球の 歴史を背負って誕生してきたのです。
(本誌第2 号の特集参照)。
この地球の歴史を逆説的に見ると、35億年の 長い長い歩みは、遅々としているようでありなが ら、確実に究極の生物としてのヒト科のヒトの誕 生を準備してきたとも言えるようで、人間は、全 ての自然の恵みを得て生まれた存在、地球に送り こまれた存在と考えるべきではないかと思われま す。
それは、別の言い方をするならば、人間の本来 的なあるべき姿は、誕生を準備してくれた大自然 に感謝し、自然の恵みを受けながら自然と共生す ることであり、生存のために地球環境を壊さない 範囲で自然の産物を利用させてもらい、可能な限 り自然に恩返しをするというところにあるようで す。
 ここから木という植物を考えると、私達が生き て行く上で、木がなかったらと考えるとその存在 はありえなかったことを知ることができます。
 立っている木が酸素の供給、水資源の確保と循 環、生態系の維持、美観などで大きな働きをして くれていることは、以前にも見てきた通りですが、 その次の切られた後の役割を見ても、木なくして は語られない日常を知ることができます。
 建築にはもちろんのこと、家具・調度品をはじ め、機械や器具・楽器・土木用、生活用具や紙、 塗料・化粧品・薬・飲食用や日常の小物まで、生 活のあらゆるシーンに木と木の加工品、木を原料 とした物が生きています。
 木は、人間生活と人間の生存のために地球上に 出現してきたと言わざるを得ない存在だからこそ、 悠久の未来まで残さなければならない自然の植物 なのです。
それは、人間が切ってはいけないとい う論法にあるのではなく、循環資源として、再生 可能な範囲での利用が認められていると考えるべ きものではないでしょうか。
●針葉樹と広葉樹の違いと特性  
この地球史的見地からの木を大雑把に知った上 で、主に建築を対象にそれぞれの木の特徴と役割、 適材適所を探ってみます。
 まず、植物としての系統の進化の違いで大きく 分類されている針葉樹と広葉樹の違いと特徴、そ こからくる用途の適性から見ます。
【針葉樹と広葉樹の違い】  針葉樹と広葉樹の最も違う点は、進化のすすん だ広葉樹には、根から吸い上げられた水や養分を 通す道管と呼ばれるパイプがあり、木口の断面を 見るとその道管の切り口が円孔として見ることが できるのに対し、針葉樹にはその道管がありませ ん。
あるのは、道管へと進化する以前の未発達な 状態を示す仮道管です。
 仮道管というのは、水を通す働きをする細胞で、 両端が先細りになった繊維状の紡錘形をし、その 先端部分がそれぞれ上下の細胞と重なり合い、そ の細胞の中にできている細い壁孔を通して水を上 へ送るようになっています。
 当然ながらパイプ状の道管の方が効率よく水を 通すことができ、仮道管の場合は、毛間現象的に 水を通すことになりますから効率は劣りますが、 地球上に茎を持つ植物が出現した最初の内は、仮 道管の植物しかありませんでした。
針葉樹は、仮 道管植物の最後期の茎(幹)植物と言えます。
 この道管と仮道管の違いが最も端的に現れるの が木材乾燥です。
 道管があれば、比較的乾燥は容易ですが、仮道 管の場合は、ひとつひとつの細胞に水分が閉じ込 められている状態になり、その水分を抜き出すに は天然乾燥の場合には月日を要することになりま す。
特に針葉樹の中でもスギ材の乾燥が大きなテ ーマとなるのは、細胞内に閉じ込められた水分を 抜き出すことが難しいことにあります。
 なお、針葉樹は中にはマツ類のように樹脂道を 持つ材もありますが、これは道管とは異なり、分 泌したヤニ(樹脂)を流したり、溜めたりするた めのものです。
  次に木理や杢との関係で針葉樹と広葉樹の基本 的な違いを見ることができます。
 針葉樹は全般に繊維の方向が幹の縦軸と平行して 垂直に走行した通直木理となっていることが多いと 言えます。
丸太をタテに割ると竹のようにスパッと 割れるのは、木理が通直な場合で、スギのように整 った柾目を作っています。
 一方、広葉樹の多くは繊維が傾斜している斜走木 理や幹のまわりを旋回している螺旋木理、繊維が交 互に交錯する交錯木理、繊維が波打つ波状木理など の変化を作っています。
繊維細胞の異常な配列によ って特異な模様を見せる杢(もく)が現れるのも広 葉樹にある現象です。
 これは、未進化の裸子植物が単純に上方へ伸びよ うとする性格が強いのに対し花を咲かせて実をつけ る役割を持つ広葉樹は大地にしっかり根を広げ、枝 葉を繁らせることによるもので、ねばり強さの元と なっています。
  広葉樹の中にも通直な樹幹で高木となるケヤキや マカバなどもありますが、それでも木理は針葉樹ほ どの通直性を持たず、波状木理や杢が現れ、広葉樹 らしい表情を見せています。

次に針葉樹と広葉樹が比較されるのは木の重さで す。
針葉樹はソフトウッドと呼ばれて全般に軟らか く軽い木とされ、広葉樹はハードウッドと呼ばれて 全般的に硬く重い木とされています。
 この違いが出るのは、基本的には木の性格と役割 によるもので、先に見たように通直志向の針葉樹は、 高く成長することを求め、それにつれて幹を太くし ていきます。
これに対して広葉樹は、樹冠や枝葉を 広げ、太陽などの自然のエネルギーをより多く得よ うとし、それを支える幹を育てます。
そのため針葉 樹に比べて広葉樹は成長がゆっくりしており、直径 30㎝位になるには、針葉樹では120~150年 すが、広葉樹の場合は200年以上を要します。
一概にこれだけで断定できない面はありますが、こ の面からくる違いが木理の単純(素直)さと複雑さ に現れ、硬軟と軽重の違いを生んでいると言えるよ うで、それを示すのが気乾比重です。
※気乾比重  木材の単位容積当たりの重量を示す 値のひとつ。
木材を大気中で乾燥して含水率5%の 時の比重。
数値の小さい材ほど軽く、1を越す材は 水中に沈む。
木材の細胞壁を主とする実質の比重は真比重といい 針・広葉樹ともに1.5で示され、含水率0%の比重 は絶乾比重という。
他に伐採直後の生材比重もある が、主に木材の比重は気乾比重が多用される。
 比重は樹種、産地、樹幹からの採取位置によって 異なるが、主な樹種の一般的な気乾比重は別表の 通り。

●木はそれぞれの特性を持っている  
この他にも針葉樹の特徴や広葉樹の特徴を示す 樹脂と樹脂道、広葉樹に見る道管の配列による環 孔材・散孔材、木の色や香り、水に強い木、弱い 木等がありますが、それは別の機会に譲ることに します。
 以上、大まかに針葉樹と広葉樹を特徴的に見て きましたが、ここから針葉樹と広葉樹の主な用途 を見ることができます。
 建築用に木材を区分すると大きくは柱、梁・土 台等の構造材、鴨居・長押・敷居・廻縁等の造作 材、板類として用いられる壁面材・床材・天井材 等の内装材、外壁や外構に用いられる外構材があ ります。
 それぞれについて、乾燥もされていることを前 提に考えれば、用途ごとに適した材種が見えてき ます。
 通直で上からの荷重に強い木は角材に、木理に 意匠性の高い木は内装材に、水に強い木は外構に などということになりますが、部位別に主な適材 をあげてみます。
構造材 <柱材> スギ、ヒノキ、ツガ(米ツガ)が主で、 東北・北陸ではヒバ(アテ)も使われます。
大黒 柱としてはケヤキが著名で、通し柱としてスギ桁 丸太も使われます。
<梁材> マツ(米マツ)、ケヤキが代表格でス ギ、ヒノキも使われます。
<土台角> スギ、ヒノキが良く使われますが、 強度と耐湿性に優れたマツ(米マツ)が重用さ れます。
広葉樹では耐久性の強いクリも使われ ます。

造作材
<鴨居、長押、廻縁、竿縁、敷居等>  スギ、 ヒノキ、マツ、ツガ、サクラ、ヒバ(アテ) 、が主で、木理の通直な広葉樹材が使われる こともあります。
内装材  ムク板としての床・壁面に使われる材は多く、 スギ、ヒノキ、マツ、カラマツ、ヒバ(アテ)な どの針葉樹があります。
広葉樹ではケヤキ、マカ バ、ナラ、タモ、ミズメなどが主なものですが、 反りやねじれは生じやすいが木目の意匠性の高い 広葉樹や希少性の高いスギ、マツの銘木はツキ板 (スライスウッド)にされ、合板等を基材にした 化粧合板として使われ、造作材の化粧貼りとして も使われます。
参考文献 ・佐伯 浩著 「この木なんの木」(海青社) ・「森林・林業・木材辞典」(日本林業調査会)
ホームページの制作者が出会った山林労働者の方の山林労働の話をまとめたものです。大正3年生まれだそうで、現在では殆ど行われなくなった木材伐出の手法の貴重なお話をまとめたものです。山小屋、枝打ち、皮はぎ、桶材、担ぎ-斜叉、担ぎ職人、鳶と鶴、算盤修羅、ワイヤーの出貌、手車、道路、水力式製材、複数の飛ばし線、鉄線の張上げ、「湧かす」、奈留修羅、闊業樹の伐出、七部切り、投げ臼、飛び付き臼、溝途堰、堰出し作業、狩り川、アバ、捻、捻の縛り方、目牙組み、鐶組み、筏乗り師、川悪日、古木の流送、筏の鉄砲堰、無人尻取り架線、山之神祭り、矢遠のブレーキ、架線の運澱、本線締め、架線の種類などの項目にわかれています。ホームページは 今は昔、山林労働者の知識 です。
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