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エコロジー住宅の奨め)

構造体の持続性を高める木造伝統構法

秋田県立大学木材高度加工研究所

鈴木有

■構造の合理性と持続性   
私たち日本人の祖先が形づくってき た伝統民家の住まいと暮らしには、洗練 された見事なエコロジ-(環境共生)的 調和があることを、前回はお話ししまし た。
 今回は、この伝統民家をつくる「木造 伝統構法」が現代の構造力学の眼から見 ても、優れた合理性を持つことをお話し しましょう。
そこには、使用する材料の 特質を見極めながら、木の軸組を長寿命 に使うための智恵と工夫が凝縮されてい ると言ってもよいでしょう。
その内容を順を追って説明します。

写真1→土壁と板壁を用いた新伝統法 実大住宅実験棟(秋田県立大学木材高度加工研究所)
●水平材を多く用いた曲げで抵抗する柔 軟な軸組【図1】  伝統構法の軸組には、下から土台や足 固め、何本かの通し貫、指鴨居と桁や梁 というように、多数の水平材を柱に貫通 させ、接合部を固めて縫い付けます。
そ の接合部は、同じ組立式の鉄骨造のよう に剛くはありませんが、そこに取り付く 水平材や柱が力を受けて曲がろうとする ときに、その力を受け止めてしっかりと そしてしなやかに抵抗します。
こうした 抵抗の仕組みが、水平にも垂直方向にも 幾重にも重なったのが伝統構法の軸組で す。
全ての部材が主に曲がることで、し なやかに粘り強く抵抗するのです。
●水平材の通し縫いで立体架構に【図1】  
多数の水平材を縦横に柱に刺し通し、 その接合部を介して柱に縫い付けること で、伝統構法の構造体は有機的な立体架 構になります。
つまり、構造体内のあら ゆる部材が有効な抵抗要素として働くの です。
軸組を立ち上げ接合部を固め た時点から、こうした機能が働き ます。
分かりやすく言うと、建方 が終われば(普通は上棟式の頃)、 構造体はかなりの抵抗力があって 自立しますので、今の木造住宅な らすぐに補強に使う「仮筋かい」 は伝統構法では必要が無いのです。
●土壁や板壁で剛さを補強して軸 組を揺れにくく【写真1】  
木の軸組は柔軟ですが、揺れやすい。
そこで、この軸組の要所要所に剛くて強 い土壁や板壁を挿入・配置して、木材の 曲げと土壁や板壁のずれで抵抗する複合 構造体に変えてやります。
こうなると、 軸組は随分と剛くなり、揺れ難くなって、強度も上がります。
表1→木造の伝統構法と現代構法の「対震」技法の比較
●並列結合の接合部によって力(危険) 分散型に【図1】  
例えば、伝統構法の民家では、接合部 の数は数100から1000を超えます。
こ れらの多くは並列結合の形になっていま す。
こうした構造体に外から力が働くと、 この力は各接合部を介して順に分散して 伝わっていき、1つひとつの接合部や部 材に伝わる(働く)力はとても小さくな ります。
このような力分散型は、特定の 接合部や部材への過度な力の集中を避け ることが出来ます。
つまり、局部的な破 壊が発生する危険を分散できることを意 味します。
鉄やコンクリートなどの他の 建築材料に比べると柔らかく、木の繊維 に直角方向の横圧縮のめり込みに弱い木 材の軸組には、適合した構法と言えまし ょう。

写真2→壁式構造の塗りモルタルが破 れ、軸組構造の筋かい端部が引き抜けて 大きく傾いた住宅(神戸市東灘区)図2→現代の在来軸組構法の 基本抵抗機構
●「吸震関節」としての仕口・継手【図1】  
直交する材同士をつなぐ「仕口」や同 じ材間でつなぐ「継手」など部材の接合 部は、木組みのためにその断面を切り欠 きますが、相手材の木部で必ず埋めて密 着(圧着)させます。
さらに「クサビ・ ダボ・セン・シャチ」などの堅木の木片 を差し込んでここを固めます。
ここに力 が働くと、横圧縮のめり込みが先に発生 します。
これによって程々に接合部を剛 くしながら、軸組に生じた大きな横方向 の変形を吸収するわけです。
また揺れが 生じると、接触する木部が擦れ合い、こ こに摩擦熱が発生します。
揺れのエネル ギーがめり込み、破壊と摩擦熱のエネル ギーに変換されるわけです。
こうして伝 統構法の接合部は『吸震関節』とも言う べき横変形とエネルギーを吸収するメカ ニズムを持つのではないか、と私たちは 仮説しています。
●プレストレス(初期緊張)による乾燥 収縮への対処【図1】
 接合部を固着するのに用いる木片、例 えば「割楔」や「込栓」は、側面に緩い 傾斜を持たせるように作って、これらを 穴部に叩き込みます。
こうして木片にも 接合部の部材にも、一定のプレストレス がかかります。
木材は乾燥による収縮と いう性質から免れることは出来ませんが、 こうすれば乾燥収縮してもガタつきませ ん。
伝統構法の接合部の造り方は、木の 弾力を巧みに生かした対処の仕方と言え るでしょう。
●合成部材を造って架構を強化  伝統構法の軸組はたいてい開口部の鴨 居の上に小壁(垂れ壁)が、窓の下には 腰壁が、時には大きな開口部の横に袖壁 があります。
これらは「太い梁や土台や 柱」に当たる合成部材となり、有力な構 造抵抗要素です。
こうした要素が加わっ て部材や接合部の剛さや強さが高められ、 軸組全体が強化されて粘り強さを増すの です。
柱の上部に取り付く桁と指鴨居、 下部に取り付く脚固めと土台も合成部材 で、「太い梁や土台」と考えることが出来 ます。
 ちなみに、土塗りの垂れ壁が上に付い た掃き出しの開口部を持つ壁の耐力は、 全面塗り壁と比べてみると、横変形が小 さい間は数分の一ですが、最大耐力は半 分にも達するという実験結果が報告され ています。
■地震に備える懐深い技術観
●力でねじ伏せる現代構法の「耐震」観 【表1】  住宅など小規模な木造建築を造る現代 構法は、軸組が変形をしないように、壁 に筋かいを入れ、合板やボードを張って、 構造体の剛さと強さを高めて、地震外力 をねじ伏せるという技術観に基づいて設 計・建設されます。
専ら「構造体の剛構 造化」を目指すと言い換えてもよいでし ょう。
私はこれを『総力前線防衛型』と 呼んでいます。
 現代構法は、「筋かい入りの軸組構造」 と「面材を張り廻した壁式構造」の共働 作用で成り立っています。
【図2】要所に 入った筋かいに大きな力が掛かる能率の 良くない不連続な軸組構造を、外壁と内 壁が連続する壁式構造が護り、力を連続 して能率良く伝える構造体にしています。
ですから、地震でこの面の壁が破られる と、力伝達のバランスが崩れ、急速に破 壊に向かう危険をはらんでいます。
【写真2】
写真3→上部構造を自然礎石の上に直 置きする伝統的な基礎工法(秋田県中仙町)
●自然体的な伝統構法の「対震」観【表1】  伝統構法は対照的な技術観を持ってい ます。
自然体で地震外力を自己の構造体 内に受け入れ、各所に分散して吸収する 粘り強い構造体を造ろうとします。
震度 5から6の中地震には、「剛いが脆い土 塗り壁」(時には板壁)を要所に配置して、 揺れを抑えて無被害に止めようとします。
【写真1】震度6から7の大地震には、 この土壁を先に壊して、揺れのエネルギ ーをまずここで吸収し、「粘り強い立体 軸組と吸震関節としての多数の接合部」 で、揺れるほどに分散・吸収して耐えま す。
【図1】そして、人知が及ばないよう な想定外の激烈な地震動に襲われても、 「柱・束・土台を直置きする基礎」で上 部構造を滑らせる簡便な免震工法によっ て、揺れのエネルギーをここで遮り、致 命的な被害から免れようとします。
【写 真3】  伝統構法は、一つの構造体の中に「剛 構造と柔構造と免震構造を併存」させ、 襲われる地震動の強さに応じて段階的に 対処する『多段階防衛型』の「対震」機 構を持つ、と私は考えています。
見出し に「自然体」と記したのは、この構法は 無理をせず、地震力が大きくなったとき に、予め壊れる部分も想定しているから です。
土壁の塗り土を先に壊させ、構造 体が揺れながら耐える粘り強さを回復し て、接合部でのめり込みで軸組の大変形 を吸収する仕組みは、修復が容易で、補 修のための材料も限定されます。
伝統構 法は、こうして被災後も、大切な木の軸 組を護りながら長寿命に使おうという、 極めてエコロジカルな技術観に立脚して いると考えられるのです。
■エコロジーな木造「再構」の可能性  
これからの時代に必須の環境保全型構 法に裏打ちされた木造「再構」の道は、 わが国の伝統構法に率直に向き合い、謙 虚に学ぶことから始まります。
この構法 が内包する「環境保全的合理性=優れた エコロジー性」に着目して、再検討・再 評価を行い、現代技術との融合や補完を 図りながら、次世代木造の住まいづくり に反映させねばなりません。
この営みこ そ、21世紀初頭の人類最大の課題・地 球環境問題改善の展望につながると考え るのです。
プロフィール 鈴木有(すずき たもつ)  昭和13年、滋賀県生れ。
京都大学大 学院工学研究科修士課程修了。
39年、同 大学防災研究所で、耐震工学を専門に研 究。
51年、金沢工業大学建築学教授に、 建築構造学全般の講義を担当。
平成十年 に同大学の名誉教授。
平成九年から、秋 田県立大学・木材高度加工研究所教授。
木造建築フォーラム、関西木造住文化研 究会、京町屋再生研究会、これからの木 造住宅を考える会、地球村等の各会員。
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