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木を愛し木にこだわって

クラシックギター作りにこだわって


愛知県蟹江町クラシックギター製作者 一柳一雄・邦彦
●木と語り合い、木を生かす そろそろ肌寒くなり始めた11月の初旬、名古屋から電車で十分の所にある蟹江の町に、クラシックギター製作者の一柳一雄・邦彦さん親子を訪ねた。
 通りから細い道を入ってしばらくいくと、一柳さんの自宅兼工房にたどりつく。
 邦彦さんの案内で工房の中に通されると、たくさんのギター用の部材に囲まれて作業をしている父の一雄さんがいた。
しばらく一雄さんの作業を見せてもらった。
一つも無駄が感じられない動きで、次々と作業が進められている。
一段落したところで2人に話を伺った。
 一雄さんがクラシックギターを作り出したのはひょんな事からで、それまでは全くギターには興味がなかったという。
魚屋で働いていたときに職場の先輩がギターを持っているのを見て、いったいどのようにして作られているのか、中の構造はどうなっているのだろう、どうして音が響くのかと興味がわきギターを作ってみたいと思った。
なんとなくやってみようという心動かされたちょっとした出会いが、一雄さんの進む道を変えていった。
その後、いくつかの楽器メーカーや製作者の所で働き、27歳の時独立し自分で作り始めた。
 始めた頃の一雄さんは現在のように何十年も屋根裏に材を保存して育て、その材から作っていくというやり方ではなかったという。
この材でなくてはならないという材への思い入れもなく、あまり材種にもこだわらず安い材を買ってきては機械的にギターを作っていた。
しかし、作ったギターが反りや狂いなどで返品が続くうちに「これではいけない、喜んでもらえるものを作らなくてはいけない。
それが製作者として認められることであり、そうでなくては作っている意味がないのではないか」と思い、材料を初めから育てていくという現在の作り方へと変え、材を買う所から始めたという。
 それは人間を育てていくのと一緒だという。
オギャーと赤ちゃんが産まれてきたときが材を買ったときで、その後、屋根裏で何十年か乾燥させていくうちに少しずつ成長していく。
乾燥して空気と馴染んで安定し、材として一人前になったらやっとギター作りに使う。
  買った材は工房と軒続きの自宅の屋根裏に保管されている。
「人間の肌と一緒で、直射日光(紫外線)にあたるとだめだから」と一雄さんはいう。
屋根裏を見せてもらったがそこには沢山の材が乾燥され育っていく最中だった。
そこで10年以上、材料によっては25~30年位自然乾燥させる。
その後、使いやすい大きさにして、さらに工房の中で最低一年間乾燥させる。
工房の中には出番を待つ材がたくさんある。
そして使えるようになったものを順番に使っていく。
「木と話しあえるようにならなくてはならない」と一雄さんは言う。
木と話し合うことで、一番いい時期に使うことが出来る。
●ギターは木の個性の組み合わせ 長年木を見て触れてきたこと。
木への強い思い入れがあること、そして、木が生きていることを解っているからこそ出来ることだろう。
そろそろ使えるだろうとわかるのは一雄さんが長年培ってきた経験と、その経験から導き出される勘で、それがいいギターを作る大きな要素の一つだといえる。
 「ずさんな管理をしていたら割れたりしてしまいます。
お金目当てだったらこのような作り方は出来ませんよ」と一雄さん。
本当に良いものを、喜ばれるものを作りたいという強い思いが感じられた。
  息子さんの邦彦さんは高校を卒業して、当時一雄さんが指導していたギターメーカーに就職し、その後一雄さんの工房で働き出した。
「一度も継げとは言ったことがなく、継ぐ継がないはどっちでも良かった」と一雄さんはいう。
でも邦彦さんは自然と親と同じ道に進んでいった。
「今ではいい仕事に就けたと思っている」と言う邦彦さんである。

ギターは部分部分つくられひとつにまとめ上げられる

屋根裏にはたくさんの材が自然乾燥

工房の中には部品の形になったものがたくさん並んでいる
一雄・邦彦さん親子 クラシックギターは部分部分で使う材が異なる。
一柳さんの所では、主に表甲に杉や松、裏甲・胴材にジャカランダやローズウッドを使う。
まだギターの形に組み立てる前の表甲と裏甲を手で叩いて音を聞かせてくれた。
松やローズウッドや杉もいい音がしたがジャカランダは特にいい音で、他の材よりも音に厚みのある響きだった。
胴から伸びるネックにマホガニーやセドロ、ネックの指が触れる部分に付ける指板に固い黒タンを使用する。
これらの材の組合せや、内部構造の作り方によって音が作られていく。
材によって音の響きが違うので、組合せによって音が変わっていく。
これらの色々な種類の材料は同じ質の乾燥が求められる。
 木にはそれぞれ個性があるのでそれらをまとめて1つの作品に仕上げなくてはならない。
そこがギター作りの難しさでもある。
●木の力で生き続けるギター 楽器は作ったときと、何年か経ったときとでは音が違うという。
始めはどこか落ち着きのない響きだが、年数が経つに従って落ち着いた響きになる。
完成しても木は生きているので、変化し続けていく。
「作った時は見た目や、音が良くても、10年、20年後にもいい音でなければしょうがない」と邦彦さんはいう。
材を育てること何十年、そこから何十年先を見据えて作られるのが本物のクラシックギターだ。
 「80%は木で音が決まる。
残りの20%は人間の技で作る」と一雄さんはいう。
木の力を借りて、人間が物を作っていく。
木の力を引き出し木のこころを生かす理想の姿を垣間見た気がした。
 最近はギター用の木材が不足して材料が手に入りにくくなってきたという。
特にジャカランダは輸入禁止になってしまい、なかなか手に入らなくなった。
 邦彦さんは「親父の時代は、今使っている材料はたくさんあったが、今は少なくなった。
昔に材を買ってくれているおかげでありがたい。
でも、親父の時代から比べれば少なくなっているけど、今から何十年かたてば今のこの時代には、まだ材があってよかったということになるだろう」という。
 機械で挽く木よりも、昔の方法で挽いた木のほうが材としても良いという。
「機械で挽いた材は曲がっている物でも木目を見ずに無理矢理まっすぐ挽くので、後で反ったりする。
昔のやり方では、職人が材の目を見て挽いていくので後で変に反ったりすることがなく使いやすい。
しかし、今ではそのように挽ける人が少なくなってしまった」と一雄さんが言うように、手づくりの伝統が、ギター造りの世界でも衰退しているようだ。
 木に強いこだわりを持つ一柳さんだけに、材が手に入りにくくなるこれからの時代はあまり良い時代とはいえない。
「メーカーは手間が掛かって利益が薄くなるような材は使いたがらない」でもそのような材が一柳さんにとっては使いたい材である。
メーカーが良いと思う材料と、一柳さんが良いと思う材料は違うという言葉が印象的だった。
「楽器作りは時代を逆行していくものです。
」と一雄さんはいう。
昔に作られた名器を見本に、その音に近づけるように作っていくという。
昔の職人が作ったギターを研究することによって昔の職人の技が一雄さんの手に伝わり、今、その伝統が息子の邦彦さんへと伝わっていく。
 「これが一番だと思える物はない。
死ぬまで最高の物は作れないだろう」と一雄さんは言った。
最後に邦彦さんがギターを弾いて下さった。
紡ぎ出される音は厚みがあって、良く響く温かみのある音で、とても心地よく、いつまでも聞いていたいという思いがした。
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