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スギを生かす、スギを使う  

問題を克服し、全国でスギを生かすために

●スギを生かすか殺すかスギを生かすか殺すかは、いよいよ大きなテーマになってきています。
日本の森林蓄積量の40%程度を占めているのがスギです。
その多くは戦後に植樹された人工林です。
そのスギが使われず、スギ山がどんどん荒れてきています。
日本の林業全体が疲弊し、苦しみに喘いでいるのですが、その中でもスギは悲惨で、「安すぎて経費も出ない」「安くても売れない」というのが現状です。
とりわけ人工林のスギは大変で、生死の境をさまようような状況になっています。
これは今に始まったことではなく、戦後の林業政策をはじめとする政治と行政そのものに原因と責任があります。
このことは本誌第20号特集Ⅰその(1)「なぜ日本の木が使われないの?」で触れていますので繰り返しませんが、スギに絞って論じてみます人工林化それ自体が、日本の林業を衰退させる目的を持っており、その通りの結果になったのです。
40年以上にわたって植林木は保育しなければならず、収入を得ることができなかったのですから、衰退したのは当然のことです。
その我慢の時を経て伐期に入ってきているこのスギ材を有効に使うことで林業の再生も、木材等の復興も、木の家づくりもすすむことになるはずなのです。
ところがそうなっていないのですから、それはなぜか、どうすればいいのかを考えなければなりません。

●使わなくされているスギまず、なぜスギが使われないかという問題についてです。
その理由は、第1に、価格が安すぎるために生産対象にできないことです。
戦後政策の下で、スギの代わりとして大量に輸入されたのが米ツガでした。
この米ツガが円高もあって、スギの価格と変わらなくなり、資源量も減ると、台頭してきたのが集成材でした。
集成材もコスト競争で低価格化するとより安い芯材へとシフトし、スギ材の進出を押さえてきたのです。
管柱はその典型です。
第2に、スギ材の難点を強調することで使わない風潮が作られていることです。
スギは比較的軟らかい材ですが、そのことを強調することで、構造材として縦圧力には十分対応できるにもかかわらず、敬遠するような風潮がつくられ、品確法で、強度面で問題があるかのように印象づけられているのです。
第3に、前項と関係し、乾燥の難しさを指摘して使いにくいと思わせていることです確かにスギの乾燥は、ヒノキに比べて難しいのですが、ヒノキと同じ乾燥方法で比較しているだけで、スギにふさわしい乾燥方法や乾燥技術の開発への怠りがあるのです以上のような原因がある上で、これまでの建築に関する規制は、規格化された工業製品仕様とせざるを得ないものばかりで、木材がその規制をクリアすることは大変なことでした。
 さらに、そこへ打ち出されたのが品確法で、強度や含水率などという数値的規制が強められたのです。
そもそも、戦後の建築に関する規制や基準は、住宅の洋風化とハウスメーカーの利に適うものがほとんどでした。
その最たるものが10年保証、20年保証という期限つきのものです。
 日本の住宅の平均耐用年数26年、プレハブ等では15年というのは、まさにこのような住宅政策を反映した貧困極まりないものです。
平均耐用年数26年というのは先進資本主義国での最低で、イギリス・アメリカ・ドイツなど100年前後が当たり前になっていることと比較すれば、いかに建設政策がお粗末で、大量生産・大量消費を前提にしたものであるかがわかります。
木造軸組の在来工法で正しく建てれば、木の家は有に100年は持つのですから、愚かな規制というほかないのです。
ところが、戦後の法規制は、ガッチリ固めて、自然の力には力で対抗するという石の文化の考えで塗り固められていますから、ベタ基礎で大地の持っている力を殺し、それにつなげた布基礎で床下を取り巻いて、通気という自然の働きを遮断してしまいます。
その上に建つ住宅の基本は柱を隠す大壁工法です。
ここには、自然の力を取り入れることも、木や土の材料自身が持っている力を生かすことも考えられていないのです。
根本的には、このような法規制、法体系そのものを打ち壊し、日本の家の在り方を歴史と伝統技術を基本にしたものへと変えることが必要なのです。
伝統建築は1000年前後経ってまだ健在ですし、築数100年の旧家や100~200年の民家がいっぱいあることを見ても、日本の木の家が、材料の生かし方、自然の力への対処法などでいかに優れたものであるかを学ぶことができるのです。
ですから、このような愚かな法規制を乗り越えた家づくりに、建築関係者はもっと真剣に取り組むことが今後の課題であろうと思います。
●建築材料としてスギは優れているとは言え、これを念頭に置きながら、スギ材の活用は、特別に考えなければならないでしょう。
そこで、まずその前提となる問題を整理する必要があります。
最初に確認しなければならないのは、スギは建築材料としてふさわしくない弱い木なのかという問題です。
数値的に見るとスギの気乾比重は0.4弱でヒノキよりも多少軽く、やや軟らかめで、鉄やコンクリートと比べれば、はるかに軽く、軟らかいことになります。
このことが建築材料としてスギの不適格さを示すかと言えば、そうではなく、縦の圧縮力では1平方㎝当たり400㎏t程度でコンクリートにやや劣る程度です。
木は全般に縦圧力に強いのは、針葉樹の場合、体積の内の90%以上が幹の縦方向に繊維や管状の細胞がほぼ平行して配列しているからです。
木材は、植物のもっとも進化した形状をしているというのは、管を束ねたような繊維と管からなっている(維管束植物という)ことがそのひとつです。

これによって通直に伸び、25~30mそれ以上の高さで、てっぺんまで広がる枝葉まで支えているのです。
何十tにもなる自重を支えるだけでなく、風や雪・雨といった自然の試練にも耐える力を持っているのが立っている木です。
その木は切られて使われる時には、水分をほとんど出して管はパイプのような中空になっているのですから、建築物では縦の圧縮率に十分耐える力を持っているのです。

このことは、柱物などの構造材としての強度を十分すぎるほど持っていることを示しています。
構造材の中でも、横架材として見たときは、長いスパンでは多少たるみが出ることになりますが、材の組み合わせや補強の仕方、使い方を工夫すれば十分使えることになります。
本誌で以前紹介した田原賢さんの構造設計による兵庫県の丹波篠山の屋外施設の例や、大阪・枚方市の山田池公園の木造施設、宝塚市の雲雀ヶ丘学園文化館、その他数多くの実例があります。

単純に1本の構造材だけを想定してスギを論ずるのではなく、工夫し、研究すれば用法や用途はいくらでも出てきます。
耐震性が問われるということから、床としても剛床の耐震性が言われ、スギ材ではダメだというような論調がありますが、この面でも田原賢さんが前号から本誌に連載している「杉の可能性」に見るように、極めて高い強度数値を測定しています。
床材としてのスギを見れば、十分な剛性を持ちながら、材面は比較的軟らかですから、むしろ衝撃を緩和してくれるやさしい材だと言えるでしょう。
板材としては壁面に使われますが、耐水性や耐腐朽性も強いことから外壁にも使われることは周知の通りです。
 歴史的に見てもスギがその古くから生活の隅々に使われています。
もっとも古くはスサノウノミコトが、スギやクスノキは船に使えと説話したとされていますし、弥生時代以降の住居には主にスギが使われていたことが証明されています。
神社はヒノキがほとんどですが、寺院に関しては、かなりスギが使われていることも知られている通りです。
このように見ると、スギが建築材料として問題があり、不適格だということはまったく当てはまりません。
むしろ、今日のようにスギを疎外するかのような政策や法規こそが問われなければなりません。
それだけに、林業・木材業者や建築関係者は、スギこそが建築材料としてふさわしいということを語るべきでしょうし、積極的に使うことが大切だろうと思います。

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