ITは日本の木材業界にどのように影響するか

2004年11月

 

 ITとは、コンピューターと通信を中心に周辺機器やソフトを含め有効利用したコミニユケーションツールの総称と私は定義している。
パソコンとインターネットは代表的なものだが、目的や使い方により、さまざまな機器やソフトの効果、効率が異なってくる。
今年のインターネット白書による、インターネットの日本の世帯普及率は52%、浸透普及率は78%になってきた。
また大部分の企業でパソコンの8割以上がインターネットにつながっている状況になっているが、木材業界ではまだまだである。

? 私たちの会社では、会社規模は小さいながらも、世の中の時代に合わせ、ITを社内外の業務のために導入してきた。
光栄なことに、昨年は関西IT百選の優秀7社、木材供給システム優良事例コンクール林野庁長官賞のダブル受賞をした。
また今年8月には、マレーシア政府の各省庁幹部15名によるIT視察見学を受けた。
ITに掛ける予算もあまりなかったものの、安価な機器、ソフトを利用しての運用面でITをフルに利用してきたことが、評価されたのであろう。
テキスト ボックス: 木材業界の将来や同業者の長期戦略のことは勉強不足で詳しくはないが、自社のIT利用の経験から判断して、業界にITがどように影響してくるかは、想像できるので、この面から記述したいと思う。
1.社内システムへの影響   ITの影響度は非常に効果のあるものだと断言できる。
情報のストック、共有、スピード化などが、パソコンによる社内LANだけで可能になり、社内では誰でも、どこでも、いつでも、欲しい情報が見る事が出来る。
いろいろな業務に利用でき、すぐに社内インフラの基幹となることだろう。
当社の主な利用例を以下記載する。

1.1 社内会議 社内会議は完全ペーパーレスで、進行、議事録作成、記録保持が一体化出来る。
会議中に部下や得意仕入先にメールを送信したり、議題に関する情報をその場でネットから収集することもできる。

1.2 ISOの運用に利用 一般にISOは書類が増える、書類の管理が大変と言われているが、当社では社内ホームページを利用し、手順書、基準書、規定書、マニュアルなどの数多い文書を管理している。
また膨大な文書の中で同一文書や、最新版管理はいとも簡単にでき、間違いが発生しない。
さらに記録はメールとデーターベース(以下DB)を利用することにより、保存は確実に該当の場所に、そしてDBの検索機能を利用して、欲しい資料が瞬時に呼び出せる。

1.3 携帯電話による情報共用 営業や技術者が得意先や現場への訪問前後に、その内容を携帯電話から会社宛にメールを送り、受信パソコンはメールの自動配信機能で、全社員にインターネット経由で再配信する。
結果として全社員が外部を廻っている人の行動がわかり、また成果情報も同時に社員全員に共有ができる。

1.4 データーベース利用 名刺管理は、分野ごとの並び替え、住所からの検索など、今まで不可能だったものが、DBの利用で確実になり、多面的に活用できる。
またDBを利用し、ファイリングに利用しているが、費用はまったくかからず、電子ファイルリング以上の効果を挙げている。
また木に関するあらゆる情報もDBで管理しており、欲しい情報が、いつでも、社内のどこからでも閲覧することが出来ている。
このようなスピードがあり、確実で、便利に利用できるので、導入時に費用はかかるが、業務の内容と比べれば実質的にはコストダウンとなる。

1.5 しかし深刻な問題もある  あまりにも多い、ソフトやマンシの障害や不具合、そのため問い合わせや問題の切り分けや調査のため、時間が大幅に取られる。
これはパソコンを利用すればするほど遭遇する問題で、今のところ対処方法がない。
違法コピーは、ソフトハウスの団体協会で密告制度を採用していることもあり、企業にとってもほっておけない問題になってきている。
ソフトの管理をきちんとしておかねば、社会的な信用を失うことになりかねない。
また、違法コピーを悪いと思いながらも続ける理由のひとつに、ソフトの価格が高いことがある。
自衛手段として最近多くなってきた低価格のソフトを利用せざるを得ない。
オフィスソフト10本購入の場合では100万円以上かかるものが4万円くらいで調達ができる。

2.インターネットによる影響 2.1.メール、通信  インターネットの便利で重要なことは通信機能である。
社外、社内データーを送受信することができる。
一昔前に比べると、格段の費用削減になる。
またツールとしてメールはすでにビジネスには不可欠のものである。
メールにはFAXにない機能があり、カラーFAX、証拠機能、同報、社内自動転送、文書、表、データー、地図などの添付により、精密な画像の送信、再入力の不要などの機能がある。
たとえば、工務店とのやりとりでは、後になって品番の誤りや、言った、言わないなどの問題がよく起こる。
TELであればまったく証拠記録は残らない、FAXは受注時は残るが、発注をすませば、捨ててしまう人も多い。
メールであれば何ヶ月でも残っていて、呼び出せる。
メールを利用していると、この証拠機能があることに気づく人も多い。
これら通信を利用したものはスピードと、確実性をもたらしてくれる。
 2.2.ホームページ インターネットのもうひとつの発明はホームページである。
これもビシネスで多大な影響を与えてきている。
ホームページを利用してビジネス周辺情報の収集が安価、早く、簡単にできるようになった。
また、新規の得意先や仕入先獲得ができ、売上増やコスト削減などの効果が出てきている。
ホームページでの取引形態には、一般消費者向け(BtoC)か、企業間取引(BtoB)かの2種がある。
また「新規取引」だけでなく、「取引の拡大」というのもある。
たとえば当社の例をあげると、すでに取引しているゼネコンで自社の購買担当者以外の人間が検索エンジンで、調べて当社を見つけ、既に取引コードがあることがわかり、安心して連絡してくるものである。
また、ホームページからの顧客というのは、継続性が悪いのが普通だが、これをその後のフォローで、取引の継続や拡大をする事ができる。
このようにそれぞれの取引形態によってホームページ作成と運用の要点が異なってくる。

 

BtoC 一般消費者向けビジネス

 BtoB  企業向けビジネス 

新規 取引

それなりのホームページであれば、すぐに効果が出る。

比較されるため、情報取得のためと割り切った方がよい。
実ビジネスと同じ。

既存 取引

メールマガジンなどによるあとフォローによる受注。

担当者以外からの検索による注文。
意外と多いパターン。

2.3. ホームページは流通に影響あるか2.3.1. BtoBでは流通の短略化が確実に起こる。
流通の短略化はこれまでにも何度が言われてきたが、あまり短くならなかった。
行政、識者や生産者も小売も望んでいたのだが、物流は短くなっても、商流はそのままというのが多かった(図2)。
理由は2つある。
ひとつは流通の中に位置する会社が、倉庫、在庫、資金、与信、生産者等の情報管理を有効にしていて、市場からはそれを支持をされていたからである。
そしてもうひとつは流れてくる情報を自社の流通の上下にそのまま流さないで、情報を中断あるいは加工して流していたからである。
これが流通の会社、問屋の一番の資産、ノウハウだったからである。
しかし、今ではどんな会社が、どこでどのような木材や木製品を製造や販売しているか等はホームページで検索すれば、すぐにその会社を見つけることが出来る。
見つければ、従来は通していた流通の会社を1つ2つ飛ばして、直接連絡し、注文や受注をすることは当然考えられることである。
まして、十分な収益が上がらない現在では、1円でもコストを下げたいという思いから、従来の取引先関係や系列企業以外でも、安価なものがあれば、そちらから購入する事が当然起こる。
また産地表示制度が地区名まで記載するようになると、この産地情報とホームページとで、より検索しやすくなり流通会社のノウハウとしての情報管理はできにくくなってくる。
図 BtoCでは確実に短略化してきている。
主に川上や生産者が直接に一般消費者向けにホームページで販売してきている。
その会社に、社内システム、物流や既存得意先との関係などで問題がなく、適切なホームページが作られていたら、大なり小なり効果をあげるだろう。
ホームページによるネット通販でもインターネットの初期の時代では小物など安いものしか売れていなかったが、接続の人口が多くなり、消費者の購入回数が増え、慣れてくると、住宅等の大型の買い物などをするようになってきている。
ある大手ハウスメーカーの幹部は「一般には話していないが、ホームページからの注文が急速に拡大してきた」と話してくれた。
今後もこの傾向は続くと思われる。
当社でもウッドデッキなどをホームページで販売しているが、10万円ぐらいの商品が、当社のことを何も知らない一般の消費者から、先に代金を振り込んでくる。
2-3年前迄はネットでは高額な商品は売れないだろうと言われてきたが、完全に誤りである。
価格の高い、安いは関係なくて、その商品の情報が確実に伝わるのであれば、売れるのである。

2.3.2.先に述べたような、流通の短略は、商流の短略である(図2)。
そして相手の顔が見える短略である。
相手がわかることによって、当然物流も直接になる。
そこで、従来とは異なる本当の流通の短略化が起こるわけである。
(図3)しかし、この波がそのまま続くとは思われない。
なぜなら、インターネットのビジネスは特殊で特別なものではなく、原理原則は実経済と同じであって、現実のビジネスも生産者と小売の間の流通が飛ばされているばかりではないのである。
その方向に進むか、進まないかは、総合的な経済原則によるのである。
流通の中にある会社がIT、特にホームページを活用し、良いシステムや顧客に有益な情報や利益をもたらすことができれば、力を持ち、商流の中に入り込んでいくだろう。
木材業界にとってはインターネットはまだビジネスの黎明期で実経済通りの原則を当てはめると短期的には商流と物流は一致しだすが、長期的には、商流と物流は再び別ものになる可能性がある。
インターネットの世界でも、2番手と3番手はあまり差がなくても、1番手と2番手は大きな差があり、実力が大きく開く。
市場シェアは圧倒的に1番手が抑える。
木材業界の中でも同じような現象上記はわかりやすく簡素にした木材業界イメージ図。

がおこるだろう。
流通の中でも元気のある木材ネット企業が出現する可能性がある。
(図4、5)またセグメントされた分野で、活躍する1番手がでてくるかも知れない。
会社規模に関係なければ、大幅に流通を飛ばした、会社も活躍しだすだろう。
(図6)この流通の中に位置するネット企業が1番手になるまでには、相当の苦労をする事が予想される。
新しいシステム、概念、考え方、そしてブレークスルーが必要だろう。
そして一番の問題は資金がかかることである。

2.3.3.小さい会社、あるいはスキマ産業を狙っている会社はホームページを利用して、その効果を感じることであろう。
小さい会社だから、有利というわけではない。
やはり大会社の方が何かと有利なことが多い。
ただホームページの作り方によってはコストパフォーマンスで大手よりも有利になることはある。
ホームページ来場者の意見をすばやく反映することが出来るからである。
また大手企業であればそれなりのホームページ、デザイン構成にしないといけないが、小企業であれば、ゲリラ的に顧客にとって必要な情報だけを掲載して装飾を省いた費用かからないホームページ運営をすることもできる。
コストが安い分、効率がよくなる。
ここでも実経済と同じだ。

3インターネットの問題点 インターネットを利用するについては、いままでのツールと異なることから問題が起こってくることもある。
一般的なことだが記載する。

3.1.メールになれてしまうと、メール病になってしまいがちになる。
一つ一つの問題が軽くなり、その記憶はあまり残らなくなる。
大量のメールのやりとりを軽く流すような薄っぺらい、表面的なコミュニケーションになる。
社内でも社外でも問題になる事がある。
IT病もある。
ITをツールとして利用するのではなく、購入することが目的になってしまうのである。
本来のビジネスの目的がはっきりしていれば、既存のIT機器で行える場合もある。
  

3.2.IT、特にホームページの維持運営に費用がかかるが、自社のITに費用をかけたからといって、ライバルに勝てるものではない。
ライバルがそれ以上の費用をかけてホームページを作成したら、すぐに負けてしまう。
自社の費用のかけ方ではなく、自社とライバルの費用の差が影響するのである。

3.3 BtoB で、新規の得意先などから、見積もり依頼がきても、ビジネスにならず、比較見積の材料にされてしまうことも多い。
見積などの手間ばかりかかるということもある。
ビジネス情報を早く知ることは出来るが、そこから先は通常のビジネスと割りきらねばならない。

3.4. ホームページではさまざまな情報を公開するわけだから、当然ライバル会社でも情報を見ることができる。
今までなら得意先にだけ配布していた、パンフレットや資料もライバルに流れてしまう。
よく考えて情報公開しないといけない。

4.ITを使っわないのは、衰退を意味する 先に述べたように、社内システムでは、ITを利用している会社が、どんどん内部効率を高め、決断のスピードを早め、コストを安くしていけるのに対し、利用しない会社は、会社の動きが重くなる。
それだけでも競争力が弱くなる。
メールなどを利用しないのは、FAXがないのと同じで、受注業務拒否と同じと思うのである。
また企業のホームページは木材業界のどのような業種でも必要と思う。
営業案内が必要でないような会社であれば、いらないかもしれないが、すでに持っている事が当たり前になっている。
現代の多くの人は何かあるときには、まずホームページで検索する。
取引するのに、事前にどんな会社か見るのも当然になっている。
若い世代では「ホームページを持たない会社は論外」と考えている人も多い。
ホームページを持っていることは積極的にITに力を入れている証拠ではなく、消極的に考えても持っていないことが、信用で足を引っ張る時代になってきた。
いろいろな角度から見て、IT、特にインターネットは会社規模の大小に関わりなく導入すべきと思う。
身近な業務からITを利用して、便利にすることはそれほど難しい事ではない。
なぜなら、当社でもパソコンや通信の専門家はいなかったから。

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